研究課題/領域番号 |
23592810
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮崎 真至 日本大学, 歯学部, 教授 (70239391)
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研究分担者 |
細矢 由美子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80112803)
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キーワード | 再石灰化 / 光干渉断層画像法 / 超音波測定 / 脱灰抑制 / 接着耐久性 |
研究概要 |
齲蝕は,脱灰と再石灰化の揺れ動く過程であり,これが脱灰の方向に傾くことで生じる病変である。そこで,この動的平衡をいかにコントロールするかが重要であり,これをコントロールすることを目的として,イオン徐放性のPRGフィラーの臨床応用が提案されている。PRGフィラーは,フッ化アルミノシリケートガラスを粉砕後,ポリアクリル酸による表面処理を行い,ガラス表層部に安定なグラスアイオノマー層を形成させたものである。そこで,このPRGフィラーからのイオン抽出物をもちいて,その石灰化促進剤の効果について光干渉断層画像法(以後OCT)を用いて検討した。さらに,超音波透過法を用いることによって,その考察材料とした。また,歯質の形態学的な変化をレーザ顕微鏡を用いて観察するとともに,SEMによる表面性状評価を行った。 実験には,ウシ抜去下顎前歯の唇側エナメル質あるいは象牙質をブロックとして切り出し,耐水性シリコンカーバイドペーパーの#2000まで順次研磨した後,超音波洗浄したものを用いた。これらの試片を,pH4.75に調整した乳酸緩衝脱灰液2mlに10分間浸漬した後,人工唾液中に保管した。なお,この脱灰サイクルは,実験期間を通じて一日2回繰り返した。これらの試片について,超音波送受信装置を用いるとともに,SLD光源から照射された光線が,対象物の内部に入射し,反射あるいは散乱する様相を光学干渉計によって捉えるもので,測定対象の内部構造を光干渉強度と内部位置情報から,精密断層像を得るOCTによって歯質における変化を詳細に分析した。 その結果,PRGフィラーからの抽出液は,歯質に生じる脱灰を抑制するとともに,再石灰化を促進する効果が期待できることが示唆された。これは,歯質と象牙質との接合界面における接着層の改善にも寄与するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯質の脱灰抑制ならびに再石灰化が期待できると考えられるS-PRGフィラーの効果については,昨年度にはそのコーティング剤を用いることで確認することができている。当該年度においては,さらにS-PRGフィラーからの抽出液に着目し,イオンとしての効果について検討を加えてきた。用いているている手法は,本研究室でその精度を恒常させている歯科用OCT装置とともに,他の研究室ではほとんど使用されていないものの,その精度に関しては歯質石灰化探索には欠かすことができないとも考えられる超音波装置の応用によって,次第に明らかとされてきている。 これらの成果は,逐次国内および国際学会で研究発表を行っているとともに,国内外の一流学術雑誌に投稿することによって,研究の質の検証を行うとともに,情報を経時的に発信している。 このように,本研究で得られた成果は,客観的な評価を受けるとともに広く一般にも流布されるべき工夫がされており,科学研究費の費用を得たことを広く社会に考えていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては,最終的な目的である歯質接合界面の強化にある。齲蝕によってその本質的な構造が失われた歯質に対して,いかにしてそれをもと合った状況に戻すかということは,鑑みれば医療の本質であるところから,これを目指すための臨床術式を確立することが最終目標である。そのために,基礎的研究を行うとともに,本来あるべき生体の機能とともに,その審美性をも考慮した治療術式の確立のためにも,この研究を継続する。 具体的には,ウシ歯を用いた接着モデルを用いて,これを劣化させたモデルを構築し,その再石灰化が可能な環境をこれまでの手法を用いた手法で可能かどうかを探ることである。当初からの実験目標が比較的順調に達成できており,今後の本研究の継続性を鑑み,新たな研究計画の立案を必要とする最終年度ということで立案していきたいものと考えて利う。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度から行ってきた,OCT装置を用いた脱灰および再石灰化検出のための調整を行う。さらに,これまで申請者らが確立してきた歯質再石灰化の評価などのモダリティーで得られた結果を,OCTで得られる画像と比較,検討する。これによって,OCTで得られた情報が歯質の石灰化の判定に有効であることを検証する。さらに,イオン徐放性を数段階に変化させた抽出液を用いて,再石灰化に指摘な濃度を確認する。これによって,臨床使用に向け,指摘イオン徐放量を決定する。 この検証によって,S-PRGから徐放される至適イオン濃度を提示することによって,次世代自己修復型接着システムの開発の一助とする。
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