研究課題/領域番号 |
23592815
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
奈良 陽一郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (80172584)
|
研究分担者 |
柵木 寿男 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (50256997)
山田 正 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60615178)
山瀬 勝 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (80301571)
代田 あづさ 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10307960)
新田 俊彦 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20247042)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | メタルフリー修復 / 複合ストレス / 微小引張接着強さ / 微小漏洩 / オールインワン接着システム / 歯頸部摩耗症露出象牙質 / 健全エナメル質 / 健全象牙質 |
研究概要 |
本研究では、患者・歯科医師双方が求めるメタルフリー接着性修復に焦点を絞り、直接・間接法による質の高い修復の達成を目的に検討を行った。 "複合機能試験機(MFA)およびMicro-tensile bond test(μ-TBS)を活用した実験系"では、規格化1級型築造用窩洞に2種レジンコアシステムによる歯冠築造を行い、髄床底象牙質(P壁)ならびに近心軸側壁象牙質(A壁)への微小接着強さを測定した。その結果、コア材一層塗布を実施しない填塞試料はμ-TBS値が得られなかった。一方、コア材一層塗布による填塞試料値は約10MPa以下であり、レジンコアシステムの違いにかかわらず、P壁へのμ-TBS値はA壁値より有意に小さく、窩壁象牙質の違いにかかわらず2種コアシステムのμ-TBS値は同等であった。 さらに、新規オールインワン接着システムの辺縁封鎖性に及ぼす口腔内環境想定の複合ストレス有無の影響を明らかにすることを目的に、歯頸部V字状窩洞修復に対する色素浸透試験を行った。その結果、歯頂側壁漏洩では、EXLとEBにおいて+S群が-S群より有意に大きな漏洩を示し、MBでは同等であった。一方、歯肉側壁漏洩では、システムにかかわらず、+S群と-S群との漏洩は同等であった。 "in vivo / in vitro 小型接着試験器(PAT)を活用した実験系"では、歯頸部摩耗症露出象牙質(ALD)に対する初期接着特性を明らかにすることを目的に、最近のオールインワン接着システムを用いて健全切削エナメル質(SE)と健全切削象牙質(SD)を含めた各歯面に対する引張接着強さを測定した。その結果、ALDは、オールインワン接着システム活用の場合、SD・SEとも同等の接着強さを獲得できる傾向にあることが確認できた。しかし、ALDに対する接着信頼性はSDより有意に劣り、SEとは同等であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度研究実施計画に掲げた2つの実験系のうち、複合機能試験機(MFA)およびMicro-tensile bond test(μ-TBS)を活用した実験系では、臨床的貢献度が高く、かつMFAとμ-TBSの特徴を最大限に発揮できる実験計画の検討、MFAによる口腔内環境ストレス条件の検討、臨床的修復歯面に基づく実験条件の協議・検討を経て、市販ならびに試作修復システムからの被験材料の抽出後に、規格化Micro-tensile Bond Test法と複合ストレス負荷試験との組合せ実験による評価検討を行うことができた。また、質的・形状的差異を有する臨床的修復歯面に対するμ-TBS値の評価検討、メタルフリー修復材料の基本的物性の評価検討についても実施できた。今後は、各種接着性材料と歯質との接合界面部における精査を行う予定である。。 また、in vivo / in vitro 小型接着試験器(PAT)を活用した実験系では、被験材料・被験歯質・歯面処理法等の協議・検討を経て、臨床的修復歯面(齲蝕罹患象牙質・歯頸部摩耗症露出象牙質等)に対するin vivo 測定を見据えた臨床的修復歯面・健全歯面に対するin vitro 測定ならびに各種接着システムの信頼性に長けた歯面処理法の検討を行うことができた。さらに、今後は、in vivo / in vitro環境下にあった接合界面部の評価検討を行う予定である。 以上の実験から得られた結果について、研究参画者全員で分析・検討し、平成24年度の研究フォーカスの絞り込みを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に検証できた結果を踏まえ、複合機能試験機およびMicro-tensile bond testを活用した実験系では、修復物が立体的構造を有する窩洞内において、修復中ならびに修復後の多様なストレスを受けた後の微小接着強さの測定を行う予定である。また、窩洞形態(C-value値)の変化に伴う評価検討および臨床的修復歯面(齲蝕罹患象牙質・歯頸部摩耗症露出象牙質 等)に対する評価検討、メタルフリー修復材料の圧縮・間接引張・3点曲げ強さ・重合収縮量 等の基本的物性についての測定を予定している。さらに、口腔内環境想定ストレス負荷後における接合界面および試験後破断面の検討実施を目指す。併せて、本実検系では、次世代の歯科医療を担うであろうデジタル・レストレーションの代表格であるCAD/CAM修復の接着挙動についても評価対象として追加することを検討中である。 一方、in vivo / in vitro 小型接着試験器を活用した実験系では、齲蝕罹患象牙質や歯頸部摩耗症露出象牙質をはじめとする臨床的修復歯面に対する評価検討を市販・試作システムを用いて行う予定である。また、in vivo / in vitro数値を測定することによって、過去の研究では確認できなかった両者間の比較検討ができ、興味深い成果が期待できる。さらに、ヒト抜去歯を用いた各種レジン接着システムの信頼性に長けた歯面処理法の検討、ヒト抜去歯を用いた修復試料接合界面部のSEM / FE-SEM / TEM 精査を行う予定となっている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に検証できた結果、平成24年度に得られる成果を踏まえ、最終年度となる平成25年度においても、本研究課題独自の手法である2つの実験系によって客観的評価を行い、低侵襲かつ審美的修復法としてのメタルフリー修復の確立に向け検討を行い、研究成果発表報告書の取り纏めを目指す。 具体的な研究費の使用計画としては、複合機能試験機およびMicro-tensile bond testを活用した実験系ならびにin vivo / in vitro 小型接着試験器を活用した実験系によって確認すべき事項について協議・検討し、追試に求められる実検デザインを行う。 ついで、代表的な市販器材ならびに新規材料を用いた規格化Micro-tensile Bond Test法と複合ストレス負荷試験法との組合せ実験法による評価検討およびin vivo / in vitro 小型接着試験器による臨床的修復歯面に対する接着強さを測定し、評価検討を行う。 さらに、最終年度となることから、両実験系から得られた貴重な結果を慎重に分析し、取り纏めを図り、研究成果として発表を行う。
|