研究課題/領域番号 |
23592818
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
中田 和彦 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (70261013)
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研究分担者 |
中村 洋 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40064878)
尾関 伸明 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (70469005)
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キーワード | ポリリン酸 / PolyP / ポリリン酸ナトリウム / sodium polyphosphate / 医療用材料 / 歯髄細胞 / 象牙芽細胞 |
研究概要 |
①歯髄細胞の分離と培養:前年度と同様に、患者からの試料(抜去歯)の提供が充分に得られなかったため、ラット歯髄細胞(RDP 細胞)を用いて研究を遂行した。動物実験指針に従って得られたラットの新鮮抜去歯から歯髄組織を摘出し、組織片より遊出した細胞を継代培養して、凍結保存しておいたものを本実験に使用した。 ②鎖長65のポリリン酸ナトリウム(PolyP)の調製:食品添加物トリPolyP(平均重合度10~130、太平化学産業)を20g/200mLとなるように蒸留水に溶解した後、96%エタノールを32mL添加した。約2週間、室温に静置して、形成された針状結晶の沈殿物をPolyP65として、以下の実験に使用した。 ③PolyPがRDP細胞の増殖に及ぼす影響:前年度に使用したトリPolyPとテトラPolyPの1:1混合品(関東化学)に加えて、上記②のとおり、今年度新たに調製したPolyP65、ならびに食品添加物として市販されている別のPolyP(和光純薬)とトリPolyP(太平化学産業)の4つの異なるPolyPを実験試料として、それらがRDP細胞の増殖に及ぼす影響について、前年度に引き続き検索し、比較検討を行った。その結果、市販の3種類のPolyPは、RDP 細胞に対して、0.5mMで軽度の増殖促進作用(3~13%)を示し、一方調製したPolyP65では、その1/10の低濃度(0.05mM)で約20%の増殖促進が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食品添加物などで一般に広く利用されているポリリン酸(ポリリン酸ナトリウム:PolyP)は、リン酸残基が三~十数個重合した比較的分子量の小さなものが主で、線維芽細胞においては顕著な促進効果はみられないと報告されている。そこで、その確認のために、入手可能な3種類の市販PolyPを用いて追試を行ったため、本研究はやや遅れている状況である。 今年度新たに調製した鎖長65のPolyPは、上記の市販PolyPに比べて、低濃度で有意な細胞増殖活性を有意していることが確認できたので、研究の遅れを取り戻すため、各種のPolyPが歯髄細胞の分化に及ぼす影響を早急に検索する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
医療用材料に最も適したポリリン酸(ポリリン酸ナトリウム:PolyP)を選定するために、今年度新たに調製した鎖長65のPolyPが歯髄細胞の分化に及ぼす影響を検索し、市販の3種類のPolyPの場合と比較検討する。なお、歯髄細胞の象牙芽細胞への分化マーカーとして、アリカルフォスファターゼ(ALPase)の活性を測定する。 実験方法は、各種PolyPを歯髄細胞に作用させて所定時間培養後、培養液を吸引除去して、生理食塩水で1回洗浄する。TRACP&ALP アッセイキット(タカラ)を用いて、その細胞抽出用溶液(1% NP-40 含有生理食塩水)を培養した細胞に加えて可溶化する。p-ニトロフェニルリン酸を含む緩衝液を加え、37℃で15~60分間加温し反応する。0.5N水酸化ナトリウム液を加えた後、マイクロプレート・リーダー(現有設備)を用いて、波長405nmにおける各溶液の吸光度を測定する。 次いで、歯髄炎における血管新生や創傷治癒の促進作用が注目されているマトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)についても検索する予定である。すなわち、各種のPolyPが歯髄細胞のMMPs(matrix metalloproteinases)とその内因性インヒビターであるTIMPs(tissue inhibitors of metalloproteinases)の産生に及ぼす影響ついて、定量的に比較検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養用をはじめとする各種の研究用試薬と器具、および測定用ELISA/EIAキットなどの物品を購入する。 また、ポリリン酸の医療用材料への応用の可能性に関して、さまざまな情報収集などを行うため、次年度も各種の関連学会に参加する予定であることから、ある程度の旅費も要する。
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