研究課題/領域番号 |
23592820
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
好川 正孝 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70148451)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 幹細胞 / 歯髄-象牙質複合体 / アルギン酸 / ハイドロキシアパタイト / 担体 |
研究概要 |
臨床で歯の部分的欠損の再生を試みるにはその欠損部に容易に適合させ得る担体が望まれる。そこで、生体適合性に優れ、幹細胞の培養に使用されているアルギン酸ナトリウム(AL)を基材とするALゲルから容易に歯の様々の形状の欠損に合わせて成型が可能なスポンジ状担体を作製し、担体内における硬組織形成を評価する目的で本研究を行った。また、構造強化を図るためにα-リン酸三カルシウム(TCP)、あるいはβ-TCPを添加して作製した複合スポンジ状担体(TCP/AL担体)を作製した。そして、これらの微細構造を走査型電子顕微鏡で観察した。さらに、アルギン酸ゲルから作製したこれらのスポンジ状担体における硬組織形成を評価するために、これらのスポンジ状担体内に骨髄細胞を播種してin vitroで硬組織を誘導し、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性とオステオカルシン量を測定した。 10%α-TCP/4%AL複合スポンジ状担体および10%β-TCP/4%AL複合スポンジ状担体で測定されたALP活性は4%ALスポンジ状担体よりも有意に高い値を示した。一方、真空凍結乾燥によってALゲルからのみで作製されたALスポンジ状担体は培養液中で膨潤し、形状が維持できなかった。それぞれの担体には硬組織形成のために必要な形状の気孔の存在は確認された。TCPを含むALゲルから作製したTCP/AL複合スポンジ状担体ではTCPが細胞の付着を増加させ、さらに、細胞の分化、および硬組織形成に有効であったと考えられる。とくにβ-TCPより易溶性であるα-TCPは無機イオンの溶出により、担体内での硬組織形成を促進したものと考えられる。 TCP/AL複合ゲルから作製した複合スポンジ状担体は硬組織形成に有効で、10%α-TCP/4%AL複合スポンジ状担体はその気孔内で硬組織を効果的に形成したことが免疫化学的に示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円柱状より円筒状の多孔質ハイドロキシアパタイト担体で多くの気孔が骨で満たされることがin vivoで明らかにされているが、全ての気孔に骨形成を生じてはいないのが現状である。そこで、担体内の全ての気孔での骨形成を可能にするため幹細胞の細胞付着を重視して幹細胞を含むアルギン酸ゲルを多孔質ハイドロキシアパタイトの気孔に満たし、in vivoでの担体気孔内骨形成試験を行い、オステオカルシン量の顕著な増加を認めた。オステオカルシン量の増加は骨の増加の指標となるもので、今後、組織切片を作製して全気孔における骨を包含する気孔の割合の増加が確実と推察され、実験の進行の道筋がつけられたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、アルギン酸ゲルを多孔質ハイドロキシアパタイトの気孔に満たし、凍結乾燥と熱架橋そして化学架橋で多孔質のアルギン酸/ハイドロキシアパタイト・ハイブリッド担体を作製し、in vivoでの担体気孔内骨形成を確認する。その方法として、オステオカルシン量の免疫化学的測定の他に、埋入した担体の組織切片を作製し、全気孔中の骨を包含する気孔の割合を計測して骨形成の促進の指標とする。また、ラットの末梢血中の細胞、そして、口腔粘膜細胞にTGF-βやBMPなどの成長因子、多糖類や必須アミノ酸を添加して、それぞれから幹細胞を得る。 さらに、ラット末梢血由来幹細胞および口腔粘膜由来幹細胞の増殖促進のため、in vitroでの成長因子のスクリーニングを継続する。また、骨形成誘導因子のデキサメタゾンを添加し、末梢血由来細胞あるいは口腔粘膜由来細胞によるnodule形成をin vitroで確認し、これらの幹細胞による骨または象牙質形成を実現させる。幹細胞採取源を確立し、幹細胞の分化・増殖因子を発見する
|
次年度の研究費の使用計画 |
交付される補助金は実験動物および飼料、細胞培養のためのプラスティック器具、骨ないし硬組織形成を免疫化学的あるいは生化学的に評価するための検索キット、細胞増殖促進因子のスクリーニングに用いる種々のアミノ酸類や生理活性物質などの小器具、薬品類などの消耗品の購入に充てる。 また、今年度および次年度の成果発表のため、学会出張費あるいは参加登録費に使用させていただく。成果がまとまれば、英文誌への投稿を目指しているので、英文校正の費用および掲載が許された際には掲載にかかる費用に当てさせていただく予定である。
|