研究概要 |
①ストロンチウム(以下Sr)含有試作生体活性ガラス(以下BAG)の作製;Srを含まないBAG(Sr0)の組成は SiO 53wt%; CaO 20wt% ;Na2O 23wt%; P2O5 4wt% である。CaOの20%をSrOに置換したBAG(Sr20)、CaOの50%をSrOに置換したBAG(Sr50)、CaOの75%をSrOに置換したBAG(Sr75)、およびCaO全部をSrOに置換したBAG(Sr100)を溶融法によって合成した。 ②各Sr含有試作BAGの骨形成能評価;雄性SD系ラット(12週~14週齢)36匹を使用した。頭頂骨に直径9mmの骨欠損を作製し、各Sr含有BAG粒子を埋入した。何も埋入しないものを対照とした。骨欠損部の骨形成状態をマイクロCT(Skyscan)で経時的(1ヵ月から6ヵ月)に、かつin vivo で検索した。対照では術後6カ月で欠損部辺縁からの骨形成を認めるのみだったが、SrO群では、術後3カ月でもBAG粒子周囲の不透過像に変化はなく粒子を核とした骨形成像は見られなかったので、今回の実験系ではBAG粒子は骨伝導性を示さなかったと考えられる。Sr添加BAG(Sr0,Sr20,Sr50,Sr75,Sr100)はいずれも埋入後エックス線透過性が亢進した後、エックス線不透過像が骨縁から独立した部位に出現してきた。特にSr75およびSr100では、粒子周囲にエックス線不透過像の著しい増加を認めたので、骨の新生が生じている可能性が示唆される。Srは間葉系幹細胞を骨芽細胞へと分化させる働きがあることが報告されており、欠損部位の肉芽組織中に骨芽細胞を誘導したためと考えられる。以上からBAGにSrを含有させることにより、BAGの骨形成能を亢進させる可能性が期待できる。
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