研究課題
後期高齢者における口腔機能と食品摂取に関する報告が特に少ないことに着目し, 80歳の地域住民を対象として,咬合力と食品・栄養摂取との関連を検討した.対象者は,兵庫県伊丹市,東京都板橋区(以上都市部),ならびに兵庫県朝来市,東京都西多摩郡(以上非都市部)の在宅後期高齢者793人(男性381人,女性412人,年齢79~81歳)とした.食品栄養摂取状態としてBDHQ (Brief self-administered Diet History Questionnaire)を用い,1000kcal当たりの摂取重量を評価に使用した.また,口腔機能の客観的評価として,最大咬合力を測定した.統計学的分析は,都市部・非都市部に分けて行い,各食品群および栄養素の摂取重量を目的変数とし,性別,教育歴,経済状態,家族形態,最大咬合力を説明変数とした強制投入法による重回帰分析を行った.統計学的有意水準は5%とした.対象者の平均最大咬合力,摂取エネルギー量は,ともに非都市部の方が有意に大きかった.重回帰分析の結果,都市部においては,性別,教育歴に加え最大咬合力が,緑黄色野菜ならびにその他の野菜の摂取重量に対し有意な説明変数となった.しかし非都市部では,最大咬合力といずれの食品群の摂取の間にも有意な関連は認められなかった.また栄養素に関して,都市部では,レチノール(ビタミンA),パントテン酸,αトコフェロール(ビタミンE),食物繊維の摂取重量と最大咬合力との間に有意な正の関連が認められた.今回の結果より,80歳の都市部住民において,他の因子を調整した上でも,最大咬合力と野菜やビタミン類の摂取とに正の関連が認められた.すなわち,後期高齢者においても,口腔機能の低下が食品・栄養摂取に影響を与えることが示唆された.
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J Dent
巻: 42 ページ: 556-564
10.1016/j.jdent.2014.02.015. Epub 2014 Feb 28.