研究課題/領域番号 |
23592848
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
貞森 紳丞 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40187167)
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研究分担者 |
吉川 峰加 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00444688)
藤原 勲 広島大学, 病院, 歯科診療医 (90524786)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 義歯装着者の睡眠 / 就寝時 / 義歯の装着/非装着 / 酸素飽和度 |
研究概要 |
高齢者の健康には,睡眠が大きく影響することが考えられる.超高齢社会になり,義歯装着者は多くなることが予想されるが,義歯装着者の睡眠に注目した研究はほとんど見当たらない.中でも就寝時の義歯の装着/非装着の影響については未だ明らかではないことが多い.本研究では,就寝時の動脈血の酸素飽和度(SpO2)に注目した.パルスオキシメーターを用いて,睡眠中のSpO2を測定して,義歯の装着/非装着の影響を検討することとした.SpO2低下指数(ODI Oxygen Desaturation Index,1時間あたりの酸素低下指数)と1時間あたりの無呼吸低呼吸指数(AHI : Apnea Hypopunea Index)との相関を調べた結果では,ODI-3%とAHIとの間に有意な強い相関(r = 0.89)がみられている(中野 博ほか,1998).したがって,SpO2脈拍を指標に総義歯の装着/非装着と呼吸との関係を検討することで,呼吸と義歯装着との相関の根拠を得ることができると考え本研究を計画した.現在,3名の義歯装着者を被験者として,測定機器を貸し出して,データを測定したところである.この収集したデータは,分析して種々検討している.また,現在(4月5日現在),測定に協力してもらえる2人に測定機器を貸し出しているところである.今のところ,測定は指先に測定装置を装着するのみでの測定であり,カニューレは使用できていないが,カニューレ使用を受け入れることができる対象者がいれば,併せて測定することを考えている.さらに,認知症高齢者の睡眠状態についてもデータを収集している(沼隈病院の関連施設など).認知症高齢者では,測定機器を指に着けることの困難さを考えて,睡眠時間および睡眠状態を観察研究によりデータ収集している.現在,約90名の認知症高齢者のデータを収集しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
総合的にみれば,研究は比較的順調に進んでいると考えているが,達成度としては,20~30%くらいと考えられる.原因の1つは,測定の対象者の問題と考えられる.計画では,総義歯を装着して問題なく使用している高齢者を,当初は測定の対象者としていた.しかしながら,大学病院を受診される患者では,総義歯装着者の割合が減少しているようであり,研究計画を立案した当初の条件の患者数が少ない.また,高齢の対象者であれば,全身の健康状態が不調な方も多く,測定をお願いできないこともままあった.被験者とするための条件を少し変更し,対象者数を増やすことも考えている.他の原因としては,測定機器の電源の問題があった.本測定器では電源として電池を使用する.単三の電池1個で,8時間を測定1回として,3回の測定ができるようにしている.測定回数としては最大の条件である.検討した結果,測定がかなりの回数になるため,充電式の電池を購入して使用することとした.しかしながら,当初購入した充電式の電池は,1回の測定に使用したところで切れてしまい,予想と大きく異なっていた.測定機器の業者とも相談したがその原因がわからず,かなりの期間データ収集に支障をきたした.いろいろと検討した結果,充電式の電池の種類によることが判明し,種類を変えることにより,当初の想定したとおりの測定ができるようになった.また,現在は測定装置を3式使用しているが,測定のために貸し出した場合,距離が遠いところに住んでいらっしゃる方では,それぞれの都合で機器の回収までに時間がかかることもあり,データ収集が遅れている原因の1つであろう.しかしながら,測定のための条件が整ってきたので,時間の経過とともに着実に結果が出るものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
被験者については,総義歯装着者のみならず,部分床義歯を装着している高齢者に対象を広げる予定である.部分床義歯装着者については,義歯を装着しなければ咬合高径を維持できない義歯装着者を目標として,被験者を選定する.また,現在は指先に測定装置を固定しているが,被験者の了解が得られれば,鼻孔にカニューレを装着しての測定の方がより精確であるが,協力して頂ける被験者には限りがあることが予想されるので,ベースとしての測定は指先での測定が重要であろう.現在まで得られたデータから,BMIのみならず上気道の形態も関係していると考えられる.そこで,視診により,被験者を軟口蓋の状態から3型に分類(正常型,境界型,軟口蓋低位型)して,軟口蓋との関係も検討する予定である.さらに,開口状態で写真を撮り,客観性をより高めることを考えている.さらに当初の設定では,被験者の条件をできるだけ同じようにするために,BMIが18.5~25の調査対象者を想定していたが,その範囲外の被験者も検討することを考えている.データ整理の時に検討したいと思っている.現在の日本の大きな問題となっている認知症高齢者に対して,本研究で用いている測定機器を装着する予定であるが,認知症高齢者の中には装置の装着ができないことも予想される.そのため,認知症高齢者の睡眠については,観察研究もあわせて行っている.さらに当初の設定では,BMIが18.5~25の調査対象者を想定していたが,その範囲外の被験者も検討することを考えている.データ整理の時に検討したいと思っている.現在の日本の大きな問題となっている認知症高齢者に対する対応も考えている.本研究で用いている測定機器を装着する予定であるが,認知症高齢者の中には装置の装着ができないことも予想される.そのため,認知症高齢者の睡眠については,観察研究もあわせて行っている.
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次年度の研究費の使用計画 |
おおよそのところは研究計画通りであるが,前年度の進行状況などから考えて,計測機器1式の追加を考えている.本研究では被験者に協力してもらい行っているが,一人の被験者について,最低でも就寝時に3回の測定することを想定している.一人当たりの測定回数が増えれば,1台の占有時間が長くなり,現在の台数では一人の被験者に対する時間が長くなり,データ採取のための効率が悪い.そのため,測定機器の追加購入により,よりデータ収集を行いやすくすることを考えている.測定装置は多ければ良いのであるが,予算の関係もあるため,少なくとも,あと1式の追加購入を考えている.また,情報収集や研究成果の発表のためいろいろな学会への参加も考えている.現在,睡眠は各分野で注目されている領域であり,多くの観点からの検討が好ましい.そのため,情報交換や情報収集のために,広く活動し,より時代に対応した研究にする必要がある.また,認知症高齢者での睡眠状態と義歯の装着/非装着との関係も検討する予定である.認知症高齢者の問題は,高齢社会の日本にとり大きな問題であり,各方面からのアプローチが望まれているところである.認知症高齢者を対象とした場合,被験者を求めて施設を訪問してデータを採取する必要があり,移動に要する費用や人件費が必要である.また,軽度認知症の場合,今回用いている測定機器を使用することも検討している.そのため,測定する際に,測定装置が心身に負担をかけないように考えているが,どこまでできるか現在は不明である.装置による測定が不可能であれば,その時は,観察研究を主体とする必要がある.
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