研究概要 |
本年度は広島大学病院にて得られたVEデータを用い研究を実施した.●目的 健常若年者における口腔・咽頭機能ととろみ濃度との関連性を検討すること●方法 健常若年者(男性7名,女性2名,年齢22-26歳)を被験者とし,いずれの者も個性自由咬合で摂食・嚥下障害の自覚症状のない者とした.液体5cc,10ccならびにとろみ水5cc(5, 10, 15, 20, 30%濃度)をランダムに嚥下させ,その様子を表面筋電図(Myotrac InfinitiTM,Thought Technology Ltd., USA)とビデオ嚥下内視鏡(VE)(Naso-Pharyngo-laryngo FiberscopesTM, Pentax, Japan)を用いて評価した.嚥下反射時の顎二腹筋前腹および舌骨下筋群における筋活動量ならびに嚥下機能の主観的評価(誤嚥,口腔・咽頭内残留,早期咽頭流入)および客観的評価(嚥下指示-ホワイトアウト間の時間計測)を実施した.●結果 各被験者で誤嚥を認めなかったものの,内視鏡の存在により早期咽頭流入を示す者が大半であった.粘性が高くなるにつれ,嚥下指示からホワイトアウトまでの所要時間は延長する傾向を認めた.●考察 健常若年者であっても,粘性が高くなるにつれ,口腔内や咽頭内の残留が増え,同じ5ccでも残留のせいで追加嚥下する者が大半を占め,stage II transport様の固形物の飲み方を呈する傾向を認めた.また,とろみが強くなるにつれ舌骨・喉頭挙上における筋活動は増加傾向を示したものの,有意差を認めなかった.摂食・嚥下障害を有する者では舌運動や咽頭収縮力の低下,喉頭挙上量の減少等でますます口腔内残留や咽頭内残留のリスクが高くなるため,とろみを強く付け過ぎることも嚥下後誤嚥を引き起こすリスクに繋がることが示唆された.
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