研究課題
方法:発症初・中期のALS患者13名(男性7名,女性6名,38-70歳)の計27回のVF検査について,水3ml,1%(中濃ソースと同レベル)と3%(サウザンアイランドドレッシングと同レベル)のとろみ水各3mlを用いて嚥下機能と最適とろみ濃度との関連性を検討した.定性評価(誤嚥,喉頭侵入,口腔・咽頭内残留,AsRスケール,喉頭侵入・誤嚥の重症度スケール)を行った.造影剤にはビジパーク270TM(第一三共,東京)を用い2倍希釈の水溶液を作成し,とろみ調整剤にはつるりんこQuicklyTM(クリニコ,東京)を使用した.加えて,反復唾液飲みテスト(RSST),最大舌圧測定,ディアドコキネシス,発話明瞭度検査を実施した.結果:RSST,最大舌圧,ディアドコキネシス,発話明瞭度(最大舌圧4.8-39.7kPa, /pa/1.4-7.6回/sec, /ta/1.2-8.0回/sec, /ka/1.2-6.8回/sec,明瞭度1-5)など嚥下機能のレベルはさまざまだった.最大舌圧と口腔内残留との間に関連性が示され,20kPa未満を示した者の多くで口腔内残留を認め,トロミ濃度が高くなるにつれ奥舌から舌根部にかけての付着が顕著となり,その残留量も増加傾向であった.10kPa未満を示した者では食塊保持が困難となり,とろみ0%と1%では早期咽頭流入が起こっていた.とろみ3%では同様の場面でも,物性の影響で早期咽頭流入には至らず喉頭侵入や嚥下前誤嚥を回避できた.加えて,最大舌圧,ディアドコキネシス,発話明瞭度等はある程度維持できているものの,喉頭拳上量の低下に伴う喉頭閉鎖不全を認める者も存在した.考察:口腔機能,とくに最大舌圧と舌軟口蓋閉鎖との間に関連があり,食塊保持困難や早期咽頭流入から影響を受ける嚥下前誤嚥や咽頭内残留による嚥下後誤嚥を鑑みると,ある程度高濃度のトロミも必要であることが示された.
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