本研究では,「骨にはメカニカルストレスを感知して骨量を調節し,骨強度との平衡状態を保つ生理的フィードバック機構がある」というFrostのMechanostat theoryに基づき,インプラント周囲骨への応力の違いによる骨の動態の変化を解明することを目的としてFEMによるひずみ値の解析およびラビット脛骨に埋入したインプラント体への荷重負荷による骨動態の観察というin vivo実験を行い,以下の結論を得た. 1, FEMの結果から,今回のin vivoモデルにおける最大応力作用可能値である60N群はFrostのMechanostat Theoryにおける「pathologic overload window」の後半に属することが明らかになり,動物実験において実施する最大値として適切であると考えられた. 2, 20N群,40N群,60N群それぞれにおいて,応力に対して補償的にインプラント周囲骨の有意な増加が認められた.また,その増加は40N群で最も顕著であり,このことから骨形成,骨吸収における応力,ひずみの閾値が存在する可能性が示唆された. 3, 各荷重負荷群において,圧縮側,引張側それぞれで異なった骨の動態が観察された.圧縮側の方がより顕著な骨形成が見られ,引張側ではアバットメント部分に接触する骨の割合が有意に低かった. 4, コントロール群においては埋入時から骨レベルの変化がほとんど見られず,臨床的に認められる第1スレッドまでの垂直的骨吸収も認められなかった.これは口腔内と上皮や細菌叢の点で条件が異なることが原因と考えられた.
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