本研究は、現在行われている接着ポンティック法の評価及び新しい欠損補綴手法の開発の二つを大きな目標として計画した。現行の接着ポンティック法に関しては口腔内評価を実施した。新しい手技手法の開発については、更なる機械的強度を得て耐久性を獲得するための理工学的検討を行うこととし、歯科用ガラスファイバーとコンポジットレジンの組み合わせに関する研究を主に行った。 口腔内での現行接着ポンティック法の評価では、スクリューポストによる補強により20年以上経過する症例について報告を行った。一方、金属材料を用いた接着ブリッジでは20年では50%程度の生存率であり、接着ポンティック法よりも信頼性のおける補綴法であるかは確認できなかった。接着ブリッジ生存率の分析では、装着時の患者年齢と術者の熟練度が予後に影響を与えた因子であることが判明し、同様のことが接着ポンティック法にも言えるかもしれない。 in vitroにおける物性実験では、ガラスファイバーとコンポジットレジンの組み合わせや重合条件について検討し、コンポジットレジンの種類や重合条件が曲げ強さや破断後の破壊様式に影響を及ぼすことが判明した。コンポジットレジンの選択では自費型のようなフィラー含有量の高いハイブリッドレジンの使用が推奨された。重合条件では予備重合や後加熱の有用性が示された。ブリッジを装着する際に用いるセメントの開発では、MMA系レジンセメントにナノフィラーを添加しせん断強さやせん断疲労限度の向上を模索したが、繰り返し応力の負荷により微小クラックが生じ、物性向上に至らなかった。ナノフィラーの添加ではフィラーの含有率や種類によっては悪影響を及ぼすことが示唆された。
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