研究課題/領域番号 |
23592862
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
柳田 廣明 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20380925)
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研究分担者 |
田上 直美 長崎大学, 大学病院, 講師 (70231660)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 表面改質 / 高分子材料 / 添加物 |
研究概要 |
本研究の目的はナノサイズチタンの表面を化学的修飾を加え機能材料化を行い,歯科材料の補強添加物とすることである.チタン表面は強固な酸化膜に覆われており,このことが化学的安定性に寄与すると考えられるが一方では酸化膜の改質が困難であるとの報告が多かった.近年化学的修飾には様々な方法が報告があり,その中で歯科において使用実績の多い酸性機能性モノマーの応用について今年度は検討を行った.1)チタン酸化膜に対して酸性モノマー2種とシランカップリング処理1種についてアクリル系樹脂との結合と熱耐久性について検討した.常温(25℃)においてはいずれも良好に結合が得られたものと推測された.その後熱サイクル負荷を与えた後測定した.酸性モノマー1種(リン酸エステル系)が比較的結合が切れていないことが推測されたが,負荷の前後で有意に低下した.シランカップリング材の効果はアクリル系樹脂との結合については低く,シリカ粒子などを含むコンポジット系樹脂への応用に限る可能性が示唆された.これにはSiloxane結合層の弾性率が低い可能性があり,そのため熱膨張率や弾性率の高い材料との結合には不利であることが考えられる.2)機能性モノマーを含むコンポジット系高分子材料との結合における表面修飾処理について検討した.この材料は硬化すると脆性の性質を表し,熱膨張率もアクリル系に比較すると低いためシランカップリングの効果が高く現れた.一方で機能性モノマーの処理は熱負荷により有意に低下した.機能性モノマーの応用には合金の構成要素が大きく関与することが示唆された.以上により,コンポジット系,アクリル系高分子材料への添加を試みる場合,その表面修飾方法を分ける必要があり,次年度以のナノサイズ材料へ応用する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題では添加物としてナノサイズ酸化チタンファイバー(チューブ)を予定している.当初は水熱法で自家合成を予定していたが,現在の設備では安定した精製に難があったと思われる.そのため質の良い添加物による実験が行えなかった.この件については研究計画で対応策を講じており,次年度に外部発注を行う予定にしている.一方,機能材料化については良好に遂行できていると思われる.詳細は研究実績の概要に記載済であるが,添加物への表面修飾に使用する機能性高分子材料についての検討を行い今後採用するモノマー,化合物の選定が行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題では添加物としてナノサイズ酸化チタンファイバー(チューブ)を予定している.当初は水熱法で自家合成を予定していた.精製は可能であったが,質の安定した精製に難があった.これについては加圧条件が原因であることは明らかとなったが,そのため質の良い添加物による実験が行えなかった.加圧条件改善には予算以上の機器購入が必要となった.これにより予定していた研究費使用が出来なかった.自家精製は見切りをつけ,安定した精製には研究計画でも対応策を立てていたように,外部発注を次年度に予定する.前年度繰越分研究費をこれにあてる.発注予定先とは打ち合わせをすすめている.得られた添加物に対して化学的表面修飾を施す.修飾され表面が機能材料化したファイバーをアクリル系樹脂やコンポジット樹脂に添加し機械的強度への効果を検討する.添加比率についても検討を行う.アクリル系は歯科用接着材,義歯床用材料を前提とする.コンポジット系は歯科用間接修復材料,歯科用接着材を前提とする.最終的にはジグを用い回転(捻り)を加え咬合運動を模した負荷をかける耐久試験を予定している.これにより臨床に近いデータを得ることを目標とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度において自家合成予定であった酸化チタンナノファイバーの安定した生成が行えず,ファイバーに関する実験の遂行が困難であった.この点は研究計画で対策案を示したように,前年度繰越分を用いてナノサイズチタンの精製を外部発注とする.添加物に対して修飾を行うモノマー,添加対象の高分子材料を購入予定である.測定した結果のデータ解析用ソフトおよび計算機を購入予定である.解析した結果の発表として関連学会参加を予定している.論文製作において英文誌を予定しており,英文校正の外部発注も予定している.
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