歯冠色をもつ審美的な材料では,従来の材料では機械的強度が劣りその適応に制限があった.ジルコニアセラミックスなど新規材料も開発されているが加工性や,接着耐久性の点では従来型の材料に劣ると思われる.そこで本研究は歯科材料に対する非貴金属由来のファイバーによる補強効果を獲得することを目的とした. チタン表面は強固な酸化膜に覆われており,このことが化学的安定性に寄与すると考えられるが一方では酸化膜の改質が困難であるとの報告が多かった.近年化学的修飾には様々な方法が報告があり,その中で歯科において使用実績の多い酸性機能性モノマーの応用について検討を行った.1)チタン酸化膜に対して酸性モノマーとシランカップリング処理材についてアクリル系樹脂との結合と熱耐久性について検討した.常温(25℃)においてはいずれも良好に結合が得られたものと推測された.その後熱サイクル負荷を与えた後測定した.リン酸エステル系モノマーが比較的結合が切れていないことが推測されたが,負荷の前後で有意に低下した.シランカップリング材の効果はアクリル系樹脂との結合については低く,シリカ粒子などを含むコンポジット系樹脂への応用に限る可能性が示唆された.これにはSiloxane結合層の弾性率が低い可能性があり,そのため熱膨張率や弾性率の高い材料との結合には不利であることが考えられる.2)酸性機能性モノマーとシランカップリング剤を混合した処理剤を試作し,既成の処理剤との比較を行った.アクリル系材料に対しては酸性機能性モノマー,シランカップリング剤単体で処理するよりも混合したものが耐久性が顕著に向上した.これらにより非貴金属(チタン)ファイバーと樹脂の結合前処理条件を確定できた.前述の処理を併用し,ファイバーをアクリル樹脂に混和を行った.これにより初期接着強度の向上を認めたが,機械的性質の向上に由来したものと思われる.
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