研究課題/領域番号 |
23592864
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
近藤 尚知 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70343150)
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研究分担者 |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
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キーワード | 遺伝子導入 / BMP / 骨欠損 / 組織再生 |
研究概要 |
歯の喪失による咀嚼障害、構音障害、審美障害などの諸問題を改善・解決可能な手法として、デンタルインプラントが挙げられる。デンタルインプラントによる咬合および摂食機能回復は治療効果も患者満足度も高いが、骨量の少ない場合にはインプラントの埋入が不可能で、必ずしも容易に適用できるわけではない。 本研究の目的は、遺伝子搭載ナノデバイスを用いることによって骨芽細胞を直接組織中に誘導し、抜歯後喪失されていく骨組織を維持すること、または失われた骨組織を再生することにある。そして、本研究においては、後者の失われた骨組織の再生を主な目的と考えている。上記の目的達成のために、培養骨芽細胞および未分化間葉系細胞を用い遺伝子導入法の検討を行ってきた。遺伝子導入の方法には各種あり、リポフェクタミンを用いる方法を基準として、各種方法を比較検討してきた。また、エレクトロポレーションによる方法とも比較検討した。導入に用いた遺伝子は、BMP-2、ポジティブコントロールとしてGFPを用いた。GFPを導入した細胞においては、その蛍光が確認されており、また一方でBMP-2を導入した細胞においては、Osterix等の骨芽細胞表現型の発現が促進されている傾向があり、遺伝子が確実に導入されていると考えられる。更なる導入効率の検討のため、現存する遺伝子導入試薬の可能性を検索したところ、エンヴェロープベクターが、リポフェクタミンを用いる方法と比較して劇的な効果は認めなかった。 in vivo 導入試薬を用いて、ラット頭蓋骨に人為的に形成した骨欠損部にBMP-2の遺伝子導入を行った。左右の側頭骨に直径5㎜の骨欠損に対し、一方にはBMP-2を他方には対照として生理食塩水を注射した。マイクロCTによる観察では、遺伝子導入によって骨形成が促進される傾向が認められたが、今後詳細についての更なる検索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的達成のために、培養骨芽細胞および未分化間葉系細胞を用い遺伝子導入法の検討を行ってきたが、必ずしも決定的に優れた遺伝子導入の方法は明らかでない。リポフェクタミンを用いる方法を基準として、各種方法およびエレクトロポレーションによる方法を比較検討してきた。一方、細胞の種類によっても、導入効率が一定でないと考えられるため、各種方法を検討中である。現状、遺伝子搭載ナノデヴァイスを用いた実験、動物実験に移行する前の準備段階で多くの時間がかかった。過去の報告等と異なり、エンヴェロープベクターを使用して遺伝子導入を行っても、リポフェクタミンを用いる方法と比較して必ずしも劇的な効果は認めなかったため、想定していた内容を一部変更した。in vivo 導入試薬を用いて、ラット頭蓋骨に人為的に形成した骨欠損部にBMP-2の遺伝子導入を行い、マイクロCTによる観察を行った。左右の側頭骨に直径5㎜の骨欠損に対し、一方にはBMP-2を他方には対照として生理食塩水を注射した。マイクロCTによる観察では、遺伝子導入によって骨形成が促進される傾向が認められたが、プラスミドの量が多すぎたためか、対照側の骨再生にも影響が出た可能性があり、データのバラつきが大きかった。今後は、導入する遺伝子の量的検討も行い、さらなる検索を進めていく予定である。一方、BMP-2だけでなくVEGF, PDGF, TGF-βなど他の成長因子の骨形成促進効果についも検索を行い、PDGF, TGF-βの併用がより効果的であることを認めた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の主体をラット骨欠損モデルに対する遺伝子導入実験に移行し、Direct in vivo gene transferの実験で用いる遺伝子導入試薬でBMP-2のプラスミドDNAの導入を行い、骨組織再生の状態を検索、評価する予定である。In vitoro の実験系では、劇的な効果は観察されなかったが、遺伝子搭載ナノデバイスとしてのエンヴェーロープベクターについても、併用を試みて、Direct in vivo gene transferでの効果の検討についても試みる。 ラット頭蓋骨骨欠損モデルにおいて、骨欠損作成後GFP遺伝子搭載ナノデバイスを骨欠損部の骨膜下に注射して遺伝子導入をおこなう。GFPの蛍光を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、その導入効率と局在を解析する予定である。同様に、BMP-2の遺伝子を骨欠損部の骨膜下に注射して遺伝子導入をし、骨再生の状態を評価する。 評価法としては、マイクロCTによるエックス線画像による評価、組織切片による、細胞レベルでの形態学的、組織学的評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラット骨欠損モデルに対する遺伝子導入実験を行い、その評価を行うための消耗品費が主な研究費の使用目的となる予定である。 動物実験のための、動物飼育費と結果を評価するための試薬およびキットが必要となる。また、研究成果発表のための投稿費旅費等にも使用予定である。
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