本研究は、ヒト感覚閾値と運動機能(咀嚼筋反射)の関連を検討し、下顎運動機能障害患者の診断の可能性を検索するものである。咬筋抑制反射には、潜時15マイクロ秒あたりの一次反射と、潜時30マイクロ秒あたりの二次反射がある。しかしながらこれまでの研究過程で、両者を安定して発現させるためには、高強度の電気刺激が必要であり、その際に極度の疼痛を伴うことが判明した。したがって、経皮下での電気刺激では、これからの課題である、実際の患者に対して、同様の実験は困難であるとの結論に達した。そこで、経頭蓋磁気刺激装置が無痛での咬筋抑制反射発現に有効であることより、この経頭蓋磁気刺激装置を購入、実験を開始し、経皮的電気刺激に対して、疼痛の少ない刺激強度で、咬筋抑制反射を発現させることに成功した。また、患者に対する応用にも十分可能である結果を得て、その内容を英文誌に投稿し、受理され、発行された。一昨年度はこれをさらに応用した形で、年齢による影響に関する測定を終了し、その内容を学会発表し、学術雑誌に投稿し受理された。その後、下顎運動機能障害患者への応用を試みたが、末梢における咬合接触関係がこの咬筋抑制反射に与える影響は検討されておらず、咬合関連疾患において咬筋抑制反射の様相を分析するにあたって、咬合接触検査による条件付けは必須であり、末梢におけるコンディションを整えることで、下顎運動機能障害患者に対する、中枢からの影響の検討が可能になると考えられた。したがって、その後の研究は、咬合接触関係の客観的評価を行うことを主眼として行われ、その内容を英文誌に投稿し、受理され、2編の論文が発行された。
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