本研究の目的は、バイオ再生歯実現への優れたエナメル質形成幹細胞を獲得することにある。本研究結果は、口腔上皮由来幹細胞を利用したエナメル質再生の基盤となり、バイオ再生歯の開発/臨床応用に多大な貢献もたらすと考えられる。 本年度も、口腔上皮由来幹細胞の単離・培養法の検討を行った。実験は、口腔上皮由来幹細胞がβ-Galactosidase陽性を示す、[K14Cre]マウスと[R26R]マウスを用いた。口腔上皮由来細胞は、マウス切歯の歯原性の口腔上皮由来幹細胞の塊とされる、Cervical Loopから単離することとした。まず被験動物の下顎切歯から、Cervical Loopを採取した。細胞の単離は、outgrowth法と酵素分解法の2種類の方法にて試みた。単離した細胞が口腔上皮由来か否かは、β-Galactosidase陽性であることで確認した。この結果、酵素分解法が、口腔上皮由来幹細胞の単離にはより有効であることが明らかとなった。 次に、口腔上皮由来幹細胞の培養法は、岡本ら(2004)と佐藤ら(2009)の報告を基に、検討を行った。この結果、培養皿には、コラーゲンIコーティングを施すこと、培地は、MCDB153培地にmEGFを添加することが最適であるを明らかにした。口腔上皮由来幹細胞は、培養法の困難さから、未だ、その培養法は確立されていないが、口腔上皮由来幹細胞も、本研究で最適化された培養法を用いることで、初代培養が行えることを確認した。しかしながら、継代培養による長期間・大量培養を行うことは困難であることも明らかとなった。今後、さらなる培養環境のさらなる検討が必要であることが明らかとなった。
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