研究概要 |
これまでにヒアルロン酸の歯周組織への有用性を探るために、骨芽細胞への影響を主に検索してきたところ、骨芽細胞の遊走、増殖でヒアルロン酸添加により亢進がみられた。骨リモデリングを考慮し、ヒアルロン酸の破骨細胞への影響を検索した。6週齢ddYマウス骨髄由来細胞(BM)と1日齢マウス頭蓋冠由来骨芽細胞(OB)の共培養を行い多核破骨細胞への分化に対するヒアルロン酸の影響を酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色にて確認した。また、BMとOBのヒアルロン酸添加における増殖の影響を検索した。また、OBを用いてヒアルロン酸の骨芽細胞分化の影響を探るため、RANKL, OPG mRNAの発現をqPCRにて検討した。破骨細胞分化前のBMの接着がヒアルロン酸添加で変化がみられるかについても確認した。アポトーシスの原因の一つに老化が関係しているとの見解があることから、骨芽細胞のアポトーシスに対するヒアルロン酸の影響を検索するために、アポトーシスのシグナル伝達経路の一つであるカスパーゼ3/7活性を発光にて測定した。その結果、BMとOBの共培養において、またBMのみにおいて、ヒアルロン酸添加によりTRAP陽性多核の破骨細胞数は有意に減少した。また、BMとOBの増殖はそれぞれヒアルロン酸添加により亢進した。ヒアルロン酸添加により、骨芽細胞分化の指標となるRANKL, OPG mRNAの発現に変化はなく、BMの接着は抑制された。ヒアルロン酸が骨芽細胞の増殖を促進し、骨髄由来細胞の接着を抑制することで、骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞数のバランスが崩れ、破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化が抑制される可能性が示された。このことから,ヒアルロン酸の骨芽細胞ならびに破骨細胞への影響は骨新生に有効的に働き、歯周組織再生を促す成長因子の担体としての応用などにもヒアルロン酸が有用である可能性が示唆された。
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