研究課題/領域番号 |
23592878
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
奥山 克史 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00322818)
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研究分担者 |
小松 久憲 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 特任准教授 (30002182)
中沖 靖子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50302881)
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キーワード | 象牙質知覚過敏症 / う蝕抑制効果 / 長期耐久性 / 再石灰化 / フッ素 |
研究概要 |
申請時当初の予定では、知覚過敏症治療に使用される歯科材料が、より長期的に渡り歯面に接着させる(密着させる)ことを一つの目的としていた。コンポジットレジンと象牙質との接着に有用とされる白金ナノコロイドを作用させ、知覚過敏治療に使用されているいくつかの市販されている製品で、象牙質との接着状態を確認してみたが、白金ナノコロイド使用の有無による差は認められず、わずかの期間で脱落することがほとんどであった。そこで、知覚過敏症に用いられる歯面塗布剤は、ある期間で脱落することが当然であるとし、材料塗布後(脱落後)いかに長期にわたり、再石灰化能を持続させられるかということを目的として、研究を進めることにした。 フッ化物徐放性を有する歯面塗布剤は、その性格から象牙質知覚過敏症の治療にも有効な材料である。これらの材料を象牙質面に塗布し、一定期間後材料を除去(脱落を想定)し、その後の象牙質面の脱灰状態を観察、分析した。使用した材料はフッ化物含有歯面塗布剤2種とグラスアイオノマーセメントである。各材料を象牙質面に塗布し、24時間後に除去した。材料が除去された象牙質試料を脱灰・再石灰化を自動で繰り返すpHサイクリング装置に4週間供した。コンタクトマイクロラジオグラフによる分析から、各試料の脱灰量を、材料を塗布しなかったコントロール群と比較すると、歯面塗布剤の使用により、有意に少ない脱灰量を示した。また高崎量子応用研究所所有のPIXE/PIGE装置で、象牙質中のフッ素分布を分析した結果、材料を供した群のフッ素量はコントロールよりも有意に高い値を示した。 この結果よりフッ化物含有歯面塗布剤を使用し、除去4週後においても、再石灰化能が有意に認められることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であった、長期に渡り材料が保持されることに関して、月単位、年単位といった期間での保持が期待できないことがわかった。そのため、材料の保持期間ではなく、材料からの再石灰化能がどれだけ長きに保つためには,どうすればよいのかという視点から研究を進めることにした。その流れより、材料が脱落してからの、歯質に対する硬化、影響を検討することになり、1日保持後の材料による影響が観察された。今年度の状況としては、概ね目標に到達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度まで研究分担者であった小松久憲が、大学退職に伴い分担者の資格を喪失したが、継続して研究活動を行うことから、連携研究者として参加する。 1. フッ化物含有歯面塗布剤が、象牙質の脱灰抑制(再石灰化)に有効であることが示された。そこで、材料の様々な塗布期間(概ね1ヶ月以内)を設定し、期間による相違を確認し、有効な塗布期間を確認する。観察、分析方法は前年度と同様、マイクロラジオグラフおよびPIXE/PIGE装置を使用する。 試料作成:奥山 (小松)、分析:奥山 PIXE/PIGE装置による測定は高崎量子応用研究所および若狭湾エネルギー研究センター所有の装置を使用。奥山、小松の他連携研究者の山本(大阪大学)も参加。 2. 材料を塗布する際、事前に歯面処理することでさらに有効性が示されるか確認する。接着状態では違いを認めなかった、白金ナノコロイドなどによる前処理での効果の相違を見る。試料作成:中沖、分析:奥山
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の計画の段階では、材料と歯質(象牙質)との接着状態の解析を行うことにしており、そのための物品購入を予定していたが、研究方針転換に伴い、購入を中止したことが、未使用額発生の大きな理由である。 前年度の未使用分については、あらたに、材料の作用期間等によるフッ化物溶出の相違などを解析する必要が出てきたため、フッ素量測定に関する物品(フッ素電極、試薬、ポリエチレン容器等)の購入と、試料作成のための物品を購入する用途に充てる予定。
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