研究課題/領域番号 |
23592889
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕美子 九州大学, 大学病院, 医員 (20432916)
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研究分担者 |
鮎川 保則 九州大学, 大学病院, 講師 (50304697)
古谷野 潔 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50195872)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨増生 / 人工骨 / ティッシュエンジニアリング / 炭酸アパタイト |
研究概要 |
インプラント治療において骨増生と増生骨の保持は必要不可欠であり、本研究では骨に置換しうる、細胞を含有した骨補填材を開発し、それを足場としたインプラント周囲での骨増生と骨の保持を目指すものである。H23年度の研究計画である炭酸アパタイトブロックの調整および炭酸アパタイトブロックの材料学的検討に基づき、まず炭酸アパタイトブロックの調整を行った。具体的には焼石膏と蒸留水を練和したものをステンレスモールド中に填入し、1日間硬化させた後、リン酸三ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃、24時間水熱処理を行った。その後数回水洗し37℃でさらに乾燥させ、炭酸アパタイトを調整した。従来のハイドロキシアパタイトの調整では2100℃で焼成することから低温で処理可能な方法となっている。次に材料の材料学的検討を行ったが、従来行っていたリン酸アンモニウム水溶液を用いた水熱処理に比べ炭酸基の置換が起こっていることが示され、また60℃、80℃で水熱処理した材料と比較することにより100℃での処理は炭酸基の置換が起こっていることが示された。走査型電子顕微鏡像においては、リン酸アンモニウム処理のものでは針状構造であったものが、より板状になっており、骨芽細胞や破骨細胞が接着しやすそうなスムースな形態を示している。赤外分光分析においては波長のピークがハイドロキシアパタイトと近似しており、このことからこの材料が生体骨と同じBタイプ炭酸アパタイトに近い性状を有していると考えられる。さらにラット脛骨を用いた簡易実験を行い、壊死などの重篤な症状が見られないことを確認しており、今後標本を用いた形態組織学的を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在リン酸三ナトリウム水溶液を用いた水熱処理を行うことで、ハイドロキシアパタイトとは異なる、より低温な炭酸アパタイトブロックを調整することが可能となっている。また異なる温度での調整や他の溶液での調整と比較して炭酸基に置換されていることからも生体骨と同じBタイプの炭酸アパタイトに近似した材料の調整が可能になったと考えられる。しかし、より置換が可能な溶液もあると考えられるため、今後の研究計画である細胞実験と並行しながら材料の改良を行っていく予定である。また同研究室で骨形成可能な材料として研究がすすめられているスタチンを含有した人工骨の開発も進め、元素分析、材料学的検討(強度評価、赤外分光分析、粉末X線解析等)を行うとともに、細胞実験、動物実験に導入し、骨増生、骨の保持が得られるかの検討を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1炭酸アパタイトブロックの改良炭酸基に置換するような溶液の模索、調整を今後もすすめ、材料学的検討を行うことでより生体に近い人工骨になるよう改良を進めていく。またスタチンを封入した炭酸アパタイトブロックを調整し、材料学的検討、細胞実験、動物実験、さらにインプラントを補填部位に埋入し組織学的検討等も行う予定である。2骨芽細胞および破骨細胞との親和性の検討炭酸アパタイトブロックに骨芽細胞様細胞を播種し、一定期間培養する。骨芽細胞様細胞の初期接着性、細胞増殖(MTT分析法、トリプシントリートメントによる細胞カウント法)、細胞分化能(単位タンパクあたりのアルカリフォスファターゼ活性値、RT-PCR法によるType IコラーゲンおよびオステオカルシンのmRNA遺伝子の発現)について検討する。ラット大腿骨より採取した骨髄細胞より破骨細胞を分離し、試料上に播種する。一定期間培養後TRAP染色を行い、試料上の破骨細胞の分布を検討する。また、破骨細胞による吸収活性を試料表面に形成された吸収窩数および吸収窩総面積により定量化し、骨に近いことを確認する。また循環培養を用いることで、創製した炭酸アパタイトブロック内部にまで骨芽細胞や血管内皮細胞を増殖させる。この状態は採取された直後の自家骨に類似、またはそれ以上に活性化されたものであり、移植後の生着速度は飛躍的に上昇すると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費は引き続き人工骨作製用材料、細胞実験用器材、動物実験物品費の購入を主に行い、研究調査のための旅費、大学院生雇用のための人件費、謝金として使用する。
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