研究課題/領域番号 |
23592895
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
遠藤 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70168821)
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キーワード | DLC膜 / 口腔インプラント / 生体親和性 / 化学修飾 |
研究概要 |
研究2年目に当たる平成24年度は、プラズマイオン注入・成膜法(PBIID法)によってダイヤモンドライクカーボン膜をコーティングした純チタンの表面に機能性タンパク質を固定化する手法を検討し、このように化学修飾した純チタン試料上における細胞の動態を調べた。 機能性タンパク質の固定化法は、まず、水素終端ダイヤモンドライクカーボン膜をコーティングした化した純チタン試料を過酸化ベンゾイルとカルボン酸を含む溶媒中で処理し、試料表面にカルボキシ基を導入した。その後、試料を縮合剤(EDC)と機能性タンパク質を含むリン酸緩衝液に24時間浸漬し(40℃)、表面に導入したカルボキシ基とタンパク質のアミノ基との間でペプチド結合を形成させ、機能性分子をチタンの表面に固定化した。各表面処理過程にける試料の表面状態はFT-IRとXPSを用いて調べ、カルボキシ基の導入やタンパク質の結合を確認した。 フィブロネクチン(pFN)およびコラーゲン(Col)を固定化したチタン試料上でヒト骨髄由来間葉系幹細胞の動態を詳細に調べた結果、研磨した純チタン試料と比較して、(1)細胞の初期付着数の増加(2倍)、(2)細胞の伸展の促進、(3)ビンキュリンの発現の促進、(4)細胞増殖の促進、(5)骨芽細胞への分化の促進などの効果が得られることが分かった。 以上の結果から、口腔インプラントのフィクスチャーに対するpFNとColの固定化は、オッセオインテグレーションの早期獲得に有効であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DLC膜でコーティングしたチタン表面へ生体機能性分子を固定化し、チタンインプラントに生体活性を付与する技術の確立に成功し、本年度の研究目的はほぼ達成できた。しかし、チタン上に形成したDLC膜の密着性に関しては、試験装置の故障によって評価は完全に終了していない。口腔インプラントのアバットメント(粘膜貫通部)を想定し、ハブラシ磨耗試験を実施して、密着性や耐摩耗性を評価する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる平成25年度は、主に口腔インプラントのアバットメント(粘膜貫通部)に対するDLC膜コーティングと機能性分子の化学修飾を併用した表面処理を検討する。まず、インプラント周囲炎の予防を目的とし、DLC膜でコーティングしたチタン試料にラミニン5やIGF-1を固定化し、ヒト歯肉由来上皮細胞の付着を速やかに、かつ強固に付着させる手法を確立する。また、ヒト歯根膜細胞群の動態を表面処理によってコントロールし、歯根膜様の組織が構築することが可能かどうか検討を加える。さらに、アバットメントに抗菌性を付与することを目的として、唾液や母乳に含まれる抗菌タンパク質であるラクトフェリンのDLC膜への吸着速度や吸着量を調べるとともに、プラーク形成菌を用いてその抗菌性を評価する。また、研究初年度から得られた結果を総括し、耐久性と生体親和性に優れた口腔インプラントを開発するためのインプラント体のデザインと表面処理法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主用途は、前年度までと同様に物品費(消耗品費)になる予定である。また、DLC膜をコーティングした試料が少なくなったため、試料作製費を30万円ほど計上する。さらに、研究成果を専門学会で発表するための旅費を10万円計上する。
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