研究課題/領域番号 |
23592896
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
|
研究分担者 |
近藤 尚知 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (70343150)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / ホーミング / tdTomato / 臓器幹細胞 |
研究概要 |
赤色蛍光強発現マウス(tdTomatoマウス)の脛骨ならびに大腿骨より、骨髄細胞を取り出し、その細胞集団中に含まれる間葉系幹細胞mesenchymal stem cell (MSC)の最適な培養条件を決定するために、市販のMSC専用培地の数種を用いて培養実験を実施した。その結果、R&D社のStemXVivo培地を用いると、10継代を経ても旺盛に増殖し続ける付着性細胞が観察された。加えて、この細胞の5継代目の細胞に各分化刺激を施したところ、骨芽細胞分化ならびに脂肪細胞分化が確認されたため、この細胞がMSC様多分化能力を有することが判明した。また、この細胞が、市販の蛍光マウスよりも安定して強い蛍光を発することを、IVISリアルタイムin vivoイメージングシステム、蛍光顕微鏡レベルで確認した。さらには、フローサイトメーターにより、この細胞集団の90%以上がMSCマーカーとして知られるSca-1ならびにCD44を発現していることが判明した。以上の結果から、tdTomatoマウス骨髄由来MSCの抽出方法ならびに培養法の基盤が完成した。さらに、この細胞から発する強蛍光の体内組織透過性を確認したところ、皮下に3 x 100,000個の細胞を埋入した場合、IVISにて体外からその透過蛍光を確認できることが判明した。興味深いことに、市販の蛍光マウスより採取したMSCでは、このように高い組織透過性を有していないことを確認している。さらに、tdTomato骨髄由来MSCをヌードマウス背部皮下に埋入した後、1ヶ月後の蛍光シグナルも外部より確認された。この蛍光MSC埋入部分の組織像を確認したところ、蛍光顕微鏡下で、その局在を確認することに成功した。以上のように、我々は、tdTomatoマウスより、骨髄由来MSCを抽出・培養することに成功し、また、ヌードマウスにおける埋入実験の基本型を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の主目標であるtdTomatoマウスからのMSCの分離・培養法の確立を達成した。加えて、in vivoの実験においても、ヌードマウス背部皮下に埋入した際、その体内組織透過性は、埋入後1ヶ月を経過しても確認できたことから、長期の体内動態を追える細胞であることが明らかとなった。さらに、組織切片形成後の赤色蛍光MSCの局在についても、顕微鏡下で確認できた。これは、今後のホーミング部位からのマイクロダイセクションシステムを用いた細胞切離の際の条件検討に大きく役立つ結果である。このように、本研究の推進状況はおおむね順調であるが、tdTomatoマウス由来MSCが示す赤色蛍光の体内組織透過性を体外から確認するためには、皮下に埋入した場合において、1 x 100,000個以上を必要とすることがわかった。このように、本研究では、当初、腹腔ないし尾静脈より骨髄由来蛍光MSCを投与した後に、ホーミング先組織の判定をIVISで行うこととしていたが、IVIS法では多くの細胞が1カ所に集中しなければ、そのホーミング部位蛍光シグナルを認識することが難しい場合も生じると予想された。そこで、上記の方法により赤色蛍光発現MSCをヌードマウス体内に投与した後、各体内臓器を取り出しmRNAを抽出後、RT-PCR法にてtdTomatoが存在する臓器を確認したところ、肺にてその発現が確認できた。今後、MSCの各臓器へのホーミング能力の評価の際には、IVIS法とともにmRNAレベルで確認することも必要になると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に我々が樹立したtdTomatoマウス骨髄由来MSCの基本的な培養方法の質をさらにレベルアップし、分化能力の高いMSCの培養方法を確立する。今年度樹立したMSCの培養法では、細胞集団の90%以上がMSCマーカーとして知られるSca-1ならびにCD44を発現していることが判明しており、このままでもかなり純度の高いMSCを準備できているが、Sca-1あるいはCD44などの抗体を利用したポジティブセレクションを行い、各マーカーを高発現し純度の高いMSCを選別して用いることのできる技術を確立したい。特に、MSCの分化能力において、その誘導が難しいとされている軟骨細胞分化を有するMSC細胞の選別方法を確立し、分化能力の高いMSCをin vivoに投与できる体制を整えたい。加えて、現在利用しているtdTomato蛍光色素以上に組織透過性に優れた近赤外蛍光色素を発現するTGマウスの開発も視野に入れて本研究を進めていく必要が出て来る場合もあると考えられた。その他、今後の研究は当初の計画通り、MSCホーミング先組織の特定の後、ホーミング先でのMSC分化能力の発現機構を分子レベルで明らかとしていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
MSCのホーミング機構の解明の開発のため、今年度と同様にBMMSCのホーミング基礎実験に必要な消耗品の種類(細胞培養用試薬に400千円、細胞培養器具に300千円、実験動物に100千円)に加え、BMMSCのホーミング先の違いによる遺伝子発現頻度差を解析するため、また、ホーミング誘導分子を同定した後、その分子の発現ベクターを多数構築する必要があるため、遺伝子工学実験用試薬(PCR用試薬、発現ベクター作製試薬など)に300千円を計上した。加えて、マイクロダイセクション用器具(細胞回収用特殊グラススライドなど)に200千円を計上した。(平成24年度総額1,300千円)。
|