研究課題/領域番号 |
23592901
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
堀田 康弘 昭和大学, 歯学部, 講師 (00245804)
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研究分担者 |
中納 治久 昭和大学, 歯学部, 准教授 (80297035)
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歯学 / 三次元計測 / CAD/CAM / 矯正 / 電子カルテ |
研究概要 |
本年度の研究により,口腔内から直接歯牙や歯肉の形状を収集することのできる計測システムの開発を行ってきた.そして,これまでに海外で発表されているものよりコンパクトで,特に計測ヘッドが日本人の小さな口腔内でも容易に取り回しのできる試作機が完成した.現在までに,石膏模型の計測において再現性の高い計測ができるようになったが,光パターン投影面の状況によっては,データの連続性(空間位相のつなぎ合わせ)に不具合が生じ,再現された三次元形状の一部がくずれている場合があった.今後,こうした空間位相のつなぎ合わせの改良と共に,複数のデータをつなぎ合わせるソフトウエアを開発し,歯列全体が計測できるように改良していく. また矯正用歯列模型シミュレーションソフトの開発において,歯の移動シミュレーションを行うために、3Dデジタル模型の歯冠を自動で分割するソフトウエアの開発を行った.3Dデジタル模型の歯冠部に平均的歯列を設定し,その後,手動でおおよその歯の位置を示した後,各歯の位置設定を自動で行い,さらに,その位置情報を元に歯冠の自動切り出しを行ってきた.その結果,片顎14本の歯の自動分割を2分程度で行う事ができた.しかし,1)ベースモデルが1種類であるため特殊な歯の形態では誤差が生じやすい,2)実際の歯とベースモデルの移行部に若干の段差が発生する,3)三次元的に叢生がある症例の場合,歯の位置決めに時間が掛る,などの課題も明らかとなった. これらシステムにおいて用いられているデータフォーマットはいずれも,専用形式となっているが,今回別途STL形式に変換し出力できるよう改良をしている.これにより、続く次年度以降に行う,データの統合のための下地を整えることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,現在歯科で扱われている様々なデジタル情報を,一元管理するためのインターフェースの統一を最終目標としている.その初年度として,口腔内から直接歯牙や歯肉の形状を収集することのできる計測システムの開発を行うとともに,これまでに開発してきた,全顎歯列計測器で計測されたデータをもとに,矯正臨床で日常的に行われているシミュレーション模型の製作工程を自動化するソフトウエアの開発を行ってきた.その結果,本年度予定していた全ての予定が完遂されたわけではないが,おおむね順調な進展が見られた.また,その進展状況については,平成23年10月17-20日に名古屋国際会議場で開催された第70回日本矯正歯科学会大会&第4回国際会議において「3Dデジタル模型における歯冠自動分割法の開発」と題した発表を行い,また,口腔内計測装置システムの開発においても,4月14-15日に徳島県郷土文化会館で開催された第59回日本歯科理工学会学術講演会において「リアルタイム口腔内三次元座標測定装置の開発」と題した発表を行ってきた.一方で,現在歯科においてデジタル化されている情報のファイル形式の調査と,電子カルテシステムの中での活用状況を調査においては,現在,三次元計測データのオープン化を提唱しているデンタルCAD/CAMシステムとクローズドなシステム,それぞれの代表的な機器を用いてデータ収集を始めており,今後,双方のメリット,デメリットを明確にした上で,三次元データの活用スタイルを検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果を受けて平成24年度は,これまでに開発してきた全顎模型計測器と顔貌計測器のデータフォーマットの見直しを行い,既存の電子カルテシステムに導入しやすいオープンなフォーマットでの出力ならびに操作ができるようソフトウエアの改良を行う.また、初年度に試作した口腔内計測システムのアプリケーション面での完成度を高めたソフトウエアを開発し,実際に入手されるデータ形式の検討を行う.また,実際の修復物作製用CAD/CAMシステムの計測器としての応用も行い,その再現性精度について検討する.また,矯正用シミュレーションソフトの開発においても,現状の歯列模型だけのシミュレーションに加え,顔貌計測システムとの連携を図るために,口腔内形態の変化に伴う口腔周囲組織の変化をデータ化するうえでの基礎情報収集を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,前年度に開発試作した口腔内計測システムのアプリケーションソフト開発に物品費の大部分を使用する予定をしている.現状,このシステムの装置自体は研究協力者のからの貸与を受けており,これまでに機器そのものへの投資はないが,この装置を実際に歯科で利用可能なアプリケーションソフトとするには,その開発にはかなりの支出が見込まれる.さらに,このアプリケーションの部分において,各種データを取り扱うプラットフォームも,現代のITソリューションの傾向としてWindowsPCのみならず,AndroidやiOSなどのタブレット端末も視野に入れた開発が必要と考えられる.そのためには,今後も研究協力者と共に,既存の汎用アプリケーションとのすり合わせ等を行い,研究費での支出可能な範囲で検討していく予定である.
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