研究課題
骨量が減少した顎骨においては,患者のQOLのため骨の増生が望まれ,新生骨形成のスペースを確保できる機械的強度と生体による吸収性を有する足場材料の開発が求められている.今回,サンゴにおける増生を目的とする足場材料の条件を検討した. サンゴブロックの圧縮試験を行うとともに,サンゴ粒子のカルシウム含有酸性およびアルカリ溶液中でのカルシウム濃度を測定した.骨格の微細構造は走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察した.さらに, in vitro でサンゴとともに線維芽細胞および血管内皮細胞を共培養し,免疫組織化学的染色を行い,毛細血管の形成状態を観察した. またin vivoでイヌ大腿骨の実験的欠損部にブロック状のサンゴを埋入し,その後7週にカルセインを腹腔に投与した. その1週後埋入部の大腿骨を共焦点レーザー走査顕微鏡および光学顕微鏡で観察した. サンゴブロックの圧縮強さは約30 MPa(ラット大腿骨約55 MPa)であった.酸性溶液中ではサンゴからカルシウムが溶出し,アルカリ溶液中ではサンゴにカルシウムは沈着した.サンゴの内部は直径100~300 μmの無数の管状構造が存在して外界に開き, 隣接する管は孔で互いに連絡していた. 骨格の表面は10~20 μmの隆起物で覆われ,突起物の表面にはさらに60~200 nmの丸みを帯びた無数の突起が観察された. In vitroではサンゴ粒子の周囲に培養細胞の増殖と毛細血管の形成が認められた. また, in vivoではサンゴに接して多核巨細胞が観察され, サンゴブロックの内腔に骨芽細胞で縁取りされた新生骨が形成されるとともに,骨髄および骨膜からの骨の増生が認められた.以上のことから,サンゴは機械的強度と組織親和性を有し,骨欠損部において骨を増生させる足場材料としての応用が期待される.
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は,サンゴの物理・化学的特性を明らかにするとともに,微細構造を観察し, in vitroでの毛細血管形成能,および in vivoでの骨の増生を計画し,in vivoでの実験を除きほぼ達成できた.In vivo実験では,骨の増生が共焦点レーザ走査顕微鏡で確認できたが,生体吸収性に関しては現在進行中である.
骨増生を目的とした足場材料としてのサンゴの生体吸収性を,イヌ大腿骨を用いたin vivo 実験で行い,新生骨形成と骨吸収に関連した組織化学的な観察を行う.
平成24年度は,in vivoでイヌ大腿骨の実験的欠損部にブロック状のサンゴを埋入し,その後7週にカルセインを腹腔に投与する. その1週後埋入部の大腿骨からEDTA脱灰標本を作製し,Dapi核染色,TRAP染色,そして骨関連(オステオカルシン,オステオポンチンなど)の免疫染色を行い光学顕微鏡で観察する.また,イヌ下顎骨において抜歯後の骨増生への応用と足場材料の生体吸収をin vivo 実験で観察する.
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