口腔癌の治療において、機能温存は重要な課題である。最近では、抗癌剤、放射線治療の進歩により多くの症例で高い抗腫瘍効果が得られることがわかってきた。術前治療にて、腫瘍縮小効果が得られた症例の多くでは、腫瘍中心部に硬結が残存する。組織学的には、viableな腫瘍から瘢痕組織までさまざまである。この残存する硬結が腫瘍なのか瘢痕組織なのかの鑑別できれば、縮小手術・手術回避の適応基準の決定が可能となる。 組織弾性イメージングは組織の弾性を客観的に表示できる超音波断層法である。本法は乳腺・甲状腺腫瘍の悪性診断や、頸部リンパ節転移の診断に用いられているが、口腔癌の原発腫瘍の評価に用いた報告はない。今回、本法を用いて舌扁平上皮癌の弾性を計測し、術前治療施行例における瘢痕部分の弾性を定量化した。 舌癌症例未治療症例における腫瘍組織のstrain ratio は0.20±0.24、正常組織は0.84±0.33であった。舌癌術前治療症例における腫瘍組織、瘢痕組織、正常組織のstrain ratio はそれぞれ0.23±0.19、0.54±0.31、0.87±0.64であった。腫瘍組織、正常組織のstrain ratioは近似値を示しており、本法は再現性のある手技であることが実証された。また、術前治療癌組織が消失した部分は、癌よりも弾性が低く、正常組織よりも弾性が高い結果であった。今後、腫瘍組織と瘢痕組織のcut off値を設定できれば、縮小手術の可能性も広がるものと考えられる。
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