研究実績の概要 |
樹状細胞は種々の免疫反応において、キーパーソンの役割を果たしている。口腔癌へも多くの樹状細胞が浸潤してきており、腫瘍への免疫反応に大きく関与していると考えられる。腫瘍が成立している時点では、immune evasion mechanismが働いていると推定されるが、反対にtumorに対するimmunityも残存し、双方のバランスにより、腫瘍の進行が左右されるとされ、これに樹状細胞が関わっていると考えられる。そのため、口腔癌における樹状細胞の役割を解析することを目的とし、実験をすすめている。 今回、口腔扁平上皮癌において、樹状細胞が発現する補助刺激因子や免疫抑制の成立に関与する酵素であるIndoleamine2,3-dioxygenase (IDO)に着目し、検討を行った。 未治療の状態で生検もしくは切除された舌扁平上皮癌の検体を用いて、CD83、IDO、CD4、CD8、Foxp3の免疫組織染色を行った。浸潤している細胞の種類と臨床病期、予後に相関があるか、統計解析を行った。 CD83陽性樹状細胞は扁平上皮癌の間質に存在し、一部の樹状細胞はIDO陽性であった。IDO陽性樹状細胞の周囲には、T細胞の浸潤が認められ、樹状細胞とT細胞はクラスターを形成していた。樹状細胞とクラスターを形成しているT細胞の中には、制御性T細胞が認められた。IDO陽性樹状細胞/全樹状細胞の比が大きくなると、臨床的予後が不良になることが明らかになった。
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