研究課題/領域番号 |
23592919
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
清水 香澄 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20378368)
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研究分担者 |
田川 俊郎 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30046346)
村田 琢 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80242965)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / シグナル伝達 |
研究概要 |
申請者らは最近、ホスホジエステラーゼ (Phosphodiesterase;PDE)1シグナルと悪性黒色腫の増殖・運動能に関連があることを発見した。そこで、PDE1も阻害することが判明し、勃起不全(ED)治療薬としてすでに臨床応用されているPDE5阻害剤が、悪性黒色腫等の分子標的薬として応用可能かを検討した。細胞は、当科で樹立、継代している口腔由来悪性黒色腫MAA細胞、およびPDE1を強く発現する肝癌由来SK-HEP-1細胞を用いた。SK-HEP-1細胞にPDE5阻害剤sildenafilを作用させ、cAMP-PDE活性を測定したところ、0.5μM~50μMの間で、濃度依存性に活性が低下した。これは、PDE5阻害剤が、PDE1活性を阻害した結果であると考えられた。MAA細胞にsildenafilを作用させたところ、50μMで、増殖抑制効果がみられた。MAAと、その他の口腔悪性黒色腫細胞でPDE5活性を測定したところ活性はわずかで、遺伝子をノックダウンしても効果はないと考えられた。また、2011年、Cancer cellにPDE5と、皮膚悪性黒色腫細胞の浸潤が関係するとの論文が掲載されたことから、平成25年度に予定していた計画を一部先行させた。ほとんどの口腔由来悪性黒色腫細胞では、sildenafilを作用させても運動能に変化はなかったが、歯肉由来HMG細胞ではsildenafil作用で運動能が亢進した。 以上より、Sildenafilの効果は細胞によって異なると考えられ、各々のPDE遺伝子発現を考慮したオーダーメイド治療への応用が考えられる。ただし、運動能が亢進する場合もあることから、悪性黒色腫患者がEDや肺高血圧治療にsildenafilを使用することには十分注意が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の各項目について、結果が出ており、おおむね順調に進展している。研究成果については、平成24年5月、ドイツ口腔顎顔面外科学会の招待講演にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究は順調に進んでおり、来年度も計画に従って進める予定である。ただし、2011年、Cancer cellにPDE5と、皮膚悪性黒色腫細胞の浸潤が関係するとの論文が掲載されたことから、この分野に一気に注目が集まっており、今後競争が激しくなることが予想される。より効率的な研究方法を検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入に関してキャンペーン価格での購入や、業者との交渉を行った結果、当初の予定よりも価格をやや低く抑えることができた。ただし、来年度は価格が上昇する可能性がある。また、より効率的に実験を進めるために、新しく開発された試薬の使用にも今年度の残金を使用する。
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