研究課題/領域番号 |
23592919
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
清水 香澄 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20378368)
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研究分担者 |
田川 俊郎 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30046346)
村田 琢 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80242965)
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キーワード | 悪性黒色腫 / Phosphodiesterase |
研究概要 |
申請者らは、以前、ホスホジエステラーゼ(Phosphodiesterase;PDE)1シグナルと悪性黒色腫の増殖・運動能に関連があることを発見した。そこで、PDE1の阻害作用も有し、肺高血圧症や、勃起不全治療薬としてすでに臨床応用されているPDE5阻害剤(Sildenafil)が、悪性黒色腫の分子標的薬として応用可能かを検討した。当科で樹立、継代しているヒト口腔由来悪性黒色腫由来MAA細胞を用いて検討した。PDE1はcAMPとcGMPの両方を分解するため、それぞれの誘導体で運動能を検討した。cAMP誘導体である8-Bromo-cAMPを作用させたところ、500μM以上で抑制された。しかし、cGMP誘導体である8-Bromo-cGMPでは抑制されなかった。このことよりsildenafilによる運動能の抑制はcAMPシグナルによると考えられた。そこでcAMP-PDEシグナルについて検討した。sildenafilを作用させたところ、cAMP濃度は上昇した。次にcAMPの下流シグナルを検討した。cAMPシグナルの下流にはPKAとEpacがあるため、それぞれのアクチベーターやインヒビターを使用した。PKAの特異的アクチベーターであるN6-Benz-cAMPでは運動能は抑制された。逆に、PKAのインヒビターであるPKI14-22では亢進した。cAMPの下流シグナルはPKAである可能性が示唆された。次にPKAとは別の経路であるEpacについても検討を行った。Epacのアクチベーターを作用させたところ、運動能には影響がなかった。以上の結果より、口腔由来悪性黒色腫MAA細胞ではsildenafilがPDE1を阻害することによりcAMPが上昇し、PKAを介して運動能を抑制する可能性が示唆された。 PDE1には、PDE1A、PDE1B、PDE1Cの3種類のアイソザイムが報告されており、当教室で保有する各悪性黒色腫でのmRNA発現パターンを検討したところ、それぞれ異なっていた。発現パターンによる阻害剤の効果の違いも考えられるため、今後検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の各項目について、結果が出ており、おおむね順調に進展している。研究成果は、第58回日本口腔外科学会総会および日本口腔組織培養学会設立50周年記念学術大会・総会にて報告した。また、その後に明らかになった結果についても、第2回日米韓合同口腔外科学会(2014年9月8日~13日)にて報告予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PDE1を発現する細胞では運動能を抑制したが、細胞によってPDE1発現と、3種類のPDE1 isoform発現のパターンが異なることが判明。研究遂行上それらの発現を見極めることは重要で、詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題において我々は、PDE5阻害剤として広く臨床応用され、同時にPDE1阻害効果も有する勃起不全治療薬sildenafilが、悪性黒色腫等の分子標的薬として応用可能かを検討した。PDE1を発現する細胞では運動能を抑制したが、細胞によってPDE1発現と、3種類のPDE1 isoform発現のパターンが異なることが判明。研究遂行上それらの発現を見極めることは重要で、詳細に検討する必要が出てきた。 PDE1発現等をRT-PCR、リアルタイムPCRやウエスタンブロット等にて行い、発現が少ないのか、あるいは、無いかを検討し、今後の研究対象にするかを決定する。そのためリアルタイムPCRキット、TaqManプローブや逆転写酵素を購入予定である。
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