研究課題/領域番号 |
23592921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 晋 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招聘教員 (00367541)
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研究分担者 |
古郷 幹彦 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20205371)
辻 忠孝 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50527231)
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キーワード | 顎口腔刺激 / 摂食促進ペプチド / 学習記憶 |
研究概要 |
桂花の嗅覚刺激がオレキシンニューロンへ及ぼす影響 前年度までの行動生理学実験にて、桂花(OSM)の嗅覚刺激が摂食行動を抑制し、体重増加の抑制効果を呈する可能性が示唆されたため、本年度ではOSMの嗅覚刺激が摂食促進ペプチドであるオレキシンニューロンへ直接影響を与えるのか否かを免疫組織学的に検討した。OSM匂い刺激の対照として、ミルク(MILK)の匂いを用いて実験を行った。OSMの嗅覚刺激によって、視床下部外側野に存在するオレキシンニューロン数は全域に渡って減少し、MILK匂い刺激では明らかな変化を認めなかった。OSMによる急性的な嗅覚刺激が視床下部のオレキシンの発現量を減少させるだけでなく、ニューロン数自体を減少させ、その結果、摂食量の減少を惹起する可能性が示唆された。 咀嚼及び桂花の嗅覚刺激が空間認知能力へ及ぼす影響について 前年度には、オレキシン発現抑制効果をもつOSMの嗅覚刺激にて実験開始後1週間目の水迷路実験の結果、OSM群が他の3群に比して明らかに到達時間が早い結果を得られた。本年度では、実験開始後1週間経過した時点で6日間連続しゴール(platform)に到達するまでの時間(escape latency)を測定し、7日目にplatformを取り除き、制限時間のうちゴールエリア一帯を遊泳する時間を計測するProbe testを行い、学習記憶への与える影響を詳細に検討した。OSM、Ext+OSM群がControl、Ext群より早期にescape latencyが減少するが、最終日(day6)ではControl群が追いついてくる傾向が得られた。Probe testではExt群が他群に比してやや減少する傾向が得られた。OSMによる嗅覚刺激を提示することで、脳内のオレキシン発現抑制に伴い学習記憶を亢進させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23・24年度は、咀嚼及び桂花の嗅覚刺激が自発行動・摂食行動・摂食促進ペプチドニュローン・空間認知能力へ及ぼす影響を詳細に検討を行った。平成25年度には、咀嚼及び桂花の嗅覚刺激の睡眠覚醒へ与える影響について検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
咀嚼及び桂花の嗅覚刺激が覚醒・睡眠へ及ぼす影響について 我々は、桂花の嗅覚刺激にて、一定時間当たりの睡眠導入潜時までの短縮・睡眠時間の延長という一連の結果を得ている。本研究では、嗅覚刺激により、覚醒・レム睡眠・ノンレム睡眠のリズムや脳波(α・β・δ・θ波)が如何に変動するか検討し、さらに、咀嚼機能と覚醒・睡眠との関連性を追求する。 1.生後3 週齢のWistar 系雄性ラット ①標準的なゲージで飼育する群(非抜歯群)10 匹・②桂花匂い刺激付きのゲージで飼育する群(非抜歯群)10 匹 生後3週齢のWistar 系雄性ラットの右上臼歯部の抜歯・同側の咬筋切断を施行後、 ③標準的なゲージで飼育する群(抜歯群)10 匹・④桂花匂い刺激付きのゲージで飼育する群(抜歯群)10 匹を作成し、2.生後8週齢の時点で、ペントバルビタール腹腔内投与により麻酔施行後、脳定位固定装置に固定し、両側前頭葉皮質にステンレス製ネジ電極、頭長筋に針電極を留置する。3 .術後7 日目、覚醒・睡眠サイクルのバラつきの生じる明期開始直後を避け、午前9 時よりステージへ移し6 時間脳波・筋電図を記録する(Z. L. Huang et al., Proc Natl Acad Sci U S A 98, 2001)。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には大量のデータ保存あるいは多角的な解析を目的に解析用コンピュータを申請している。消耗品については各申請年度ともに複数の研究を同時進行するにあたり必要な実験動物、抗体・試薬、器具に関わる費用をそれぞれ計上している他、研究成果公表にあたって必要な旅費、印刷費を別途申請している。
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