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2011 年度 実施状況報告書

神経ペプチドの新規機能の解明と炎症性口腔粘膜疾患への治療応用

研究課題

研究課題/領域番号 23592924
研究機関広島大学

研究代表者

太田 耕司  広島大学, 病院, 助教 (20335681)

研究分担者 重石 英生  広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90397943)
武知 正晃  広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00304535)
鎌田 伸之  広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70242211)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード神経ペプチド / 抗菌作用 / 抗炎症作用 / 口腔粘膜細胞
研究概要

神経ペプチドやペプチドホルモンは神経伝達物質としての機能だけでなく,様々な機能を持っていると考えている.ghrelinは胃粘膜細胞から発見された神経ペプチドであり,成長ホルモンを分泌する働きだけでなく,消化管機能調節,エネルギー代謝等,多彩な機能をもっている.申請者らはghrelinを含むいくつかの神経ペプチドが,口腔粘膜に発現する抗菌ペプチドと似たアミノ酸配列,電荷,等電点を示すことを発見した. ghrelinの抗菌作用を検討した予備実験の結果,ghrelinが大腸菌に抗菌作用を持つことが示された.さらにghrelinがLL-37等の特異的抗菌ペプチドの抗菌作用を増加させる作用をもつことを発見した.ghrelinの抗菌作用,特異的な抗菌ペプチドに対する相加作用に関する報告は国内外でもない.さらにghrelinは口腔粘膜上皮細胞において炎症性サイトカインの増加を抑制する抗炎症作用が認められた. 今回の研究目的は,ghrelinを含む神経ペプチドの新規抗菌作用,口腔粘膜細胞への抗炎症作用とそのメカニズムを明らかにし,口腔感染症,口腔粘膜炎症性疾患の治療へ応用することである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

神経ペプチドghrelinの抗菌活性をBactericidal assay を用いて検討した結果,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に抗菌作用をもつことが明らかになった.抗菌ペプチドは陰性の電荷を持つため,塩濃度の増加で抗菌効果が減少することが知られている.様々な塩濃度でのghrelinの抗菌活性を検討したところ,塩濃度の添加によってghrelinの抗菌活性は減少することが示され,生理食塩濃度においては抗菌効果が持続することを確認した.ghrelinがLL-37 の抗菌効果をさらに増加することを確認した.さらにチェックボード法によって,ghrelinのLL-37の抗菌効果に対して大腸菌には相乗作用,大腸菌には相加作用をもつことを確認した.しかしながらghrelinは抗菌ペプチドDefensin 1, 4 には相加,相乗効果は示さなかった.またRT-PCR法により,口腔粘膜細胞におけるghrelinの発現を検討した結果,口腔粘膜上皮細胞,歯肉線維芽細胞,口腔粘膜擦過細胞にghrelinの定常的な発現が認められた.口腔粘膜上皮細胞における炎症性サイトカインによるghrelinの発現誘導をReal-time-PCR 法によって検討した結果,TNF-alpfa, IFN-gammaの刺激によりghrelinの発現の増加は認められなかった.またghrelin の抗炎症効果を検討するために,TNF-alpha, LPS で発現が誘導されるIL-8 の発現に対するghrelin の影響を検討したところ,Ghrelin は口腔粘膜上皮細胞においてTNF-alpha, LPS で誘導されるIL-8の発現を有意に抑制した.

今後の研究の推進方策

本年度の研究からghrelinが大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に抗菌作用をもつことが明らかになった.またghrelinは抗菌ペプチドであるLL-37に対して特異的に抗菌作用を増強させる作用をもつことが明らかになり,特に大腸菌においては相乗効果を示すことが明らかになった.ghrelinは3番目のセリン残基がオクタノイル化した特徴的配列を示す(活性化型ghrelin, acyl ghrelin).もう一方の型として,生体にはオクタノイル化修飾をうけていない不活性型ghrelin (des-acyl ghrelin)が存在する. 次年度はghrelin の抗菌作用とLL-37 の抗菌作用を増強させる作用について機能している部位を検討するために,オクタノイル基をさらに付随させたghrelinや,orexin Bといったghrelinと似た配列数の他の神経ペプチドにオクタノイル化修飾を行い,抗菌作用の増強,あるいは他の抗菌ペプチドとの協調作用の増強を検討する.またghrelin と抗菌ペプチドの菌体表層への結合を観察し,ghrelin,LL-37の局在や菌体の破壊像を検討する.さらに今回の検討において,ghrelin が口腔粘膜上皮細胞においてTNF-alpfa, LPS で誘導されるIL-8の発現を有意に抑制することが認められた.また炎症性サイトカイン刺激によるp38MAPK,ERK, JNK, STAT1など炎症性関連蛋白のリン酸化に対するghrelinの影響を検討する.さらにghrelinの他にも抗菌活性,抗炎症作用をもつ神経ペプチドが存在すると考え,substance P やneuropeptide Y などの抗菌効果や抗炎症効果を検討する.

次年度の研究費の使用計画

ghrelin の抗菌活性に機能している部位を検討するため,オクタノイル基をさらに付随させたghrelinや,Orexin Bといったghrelinと似た配列数の他の神経ペプチドにオクタノイル化修飾を行ったペプチドを作製する.これらのペプチドとacyl ghrelin, des-acyl ghrelinを用いて,bactericidal assayを行い,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に対する抗菌作用の比較を行う.またそれらのペプチドを用いてLL-37の抗菌作用に対する影響をbacterialcidal assay やチェッカーボード法にて検討する. ghrelinとLL-37の菌体表面の局在を観察するため,ghrelinとLL-37を同時添加培養した際の菌体の切片を作製,コロイド金を用いた免疫電子顕微鏡法により,ghrelin,LL-37の局在や破壊像を検討する.acyl ghrelin, des-acyl ghrelinの比較も同時に行う.ghrelin による炎症系シグナル伝達の抑制機構を検討するためにLPSを含む菌体成分, TNF-alpfa刺激によるp38MAPK,ERK, JNK, STAT1など炎症性関連蛋白のリン酸化に対するGhrelinの影響をWestern blottingやELISA法で検討する. 他の神経ペプチドがghrelinと同様に抗菌効果をもつか検討するため,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌に対するsubstance P やneuropeptide Y の抗菌効果をBactericidal assayで検討する.次年度の研究費の使用物品は細胞培養液、培養皿などほとんどが消耗品であるため, 直接経費の物品費をを使用する。また学会発表, 論文校正のため, 旅費を使用する予定である.

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公開日: 2013-07-10  

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