シェーングレン症候群は難治性の自己免疫疾患であり、現在までに根治的な治療法は開発されていない。本疾患の唾液腺においては、炎症性細胞浸潤に伴う腺房構造の萎縮、破壊が生じる一方で導管構造は残存するという組織学的特徴がある。そこで、本疾患に対する治療戦略として以下の方法を立案した。すなわち、唾液腺 腺房の構造破壊による唾液分泌機能の改善法としては、(1)細胞の基底膜構造の破壊の原因となっているTNF-αの発現を阻害する方法、(2)腺房構造の破壊が進行し、腺房の再生が困難な場合には、残存する導管細胞にアクアポリン5を発現誘導させ、導管細胞に腺房細胞の機能を付与させる臓器再生の観点に立った治療法である。またアクアポリン5の発現低下、つまり唾液腺自体の機能低下による唾液分泌低下の場合には、(3)TNF-αを制御しアクアポリン5の発現を維持させることによって、唾液分泌の機能回復を目指す。このような治療戦略により、唾液分泌牴下による口腔乾燥を根本的に改善させることを目的とした。 本研究においてはDNA脱メチル化剤であるデシタビンを、モデルマウスに投与し、唾液腺導管細胞におけるアクアポリン5の発現様式とその機能について解析した。まず、C57BL/6CrClcマウスの腹腔内にデシタビンを投与した。投与濃度は未処理、1mg/kgの2段階、投与間隔は週1回、週2回、週3回の3グループに分けて4週間継続投与した。デシタビンの最終投与から1週間後にマウスを塩酸ケタミンにて無痛的に屠殺し、唾液腺を回収し、組織標本を作製した。未処理群とデシタビン投与群の唾液腺の組織学的特徴をを解析すると、組織学的な違いは認められなかった。しかし、デシタビン投与群においては、唾液腺管細胞のアクアポリン5の発現が増強していることが確認できた。また、デシタビン投与群のマウスでは唾液分泌量が有意に増加していた。
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