研究概要 |
初年度である2011年度は,まずマウスへの酸化ストレス誘発剤投与による口蓋裂発生と生体内酸化ストレスの検討を行った。酸化ストレス誘発剤として, 2,3,7,8 - tetracgrolodibenzo dioxin (TCDD),ステロイド(プレドニゾロン)およびlipopolysaccharide (LPS)とD-ガラクトサミンを使用した。各薬剤は妊娠12日目に胃管あるいは腹腔内注射により投与した。胎生18日目に母獣を安楽死させ,母体肝臓,胎盤,胎仔肝臓,胎仔口蓋組織を摘出し,実験に供した。その結果,TCDDでは40μg/kgでほぼ100%口蓋裂が発症したが,プレドニン10mgでは平均43%の発症率であった。一方,LPSはD-ガラクトサミンを加えても,胎仔死亡率が上昇するだけで,ほとんど口蓋裂は発症しなかった。従って,母体内(特に肝)だけでの酸化ストレスでは口蓋形成に大きな影響はないと考えられた。そこで,2012年度はTCDD投与マウス胎仔の口蓋試料より連続切片を作成し酸化ストレスのマーカーである4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)の発現を確認し,酸化ストレスモデルとして,以後TCDD投与マウスを用いることとした。TCDD投与マウスでの胎仔口蓋組織の連続切片を作製し,骨関連タンパクであるRunx2,Osteopontin,ER-α,および筋芽細胞の分化マーカーであるMyoDおよびDesminの免疫染色を行った。その結果,いずれのタンパクにおいてもTCDD投与群での低発現が認められた。 最終年度である2013年度は,免疫染色の結果をWestern blot法で半定量的に解析し,TCDD投与群でのRunx2, MyoD, desminの発現低下が確認された。以上の研究結果より,TCDDは口蓋の癒合障害に加え,骨および筋形成を障害し癒合後の離開を誘発することで口蓋裂を発症させうることが示唆された。
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