研究課題/領域番号 |
23592929
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中村 典史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60217875)
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研究分担者 |
岸田 昭世 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50274064)
清野 透 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (10186356)
岸田 想子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40274089)
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キーワード | 歯原性腫瘍 / エナメル上皮腫 |
研究概要 |
これまでの研究内容は、エナメル上皮腫不死化株(AM3)及び正常口腔粘膜上皮不死化株(MOE1)を樹立させ、AM3細胞及びMOE1細胞が初代培養細胞の性質を維持し、がん化していないことを確認した後に、Real-time-RT-PCRを用いてエナメル上皮腫におけるWnt関連遺伝子及び、MMP-2,-9の発現をMOE1細胞と比較解析した。また、細胞から分泌されたMMP-2,-9の酵素活性を解析してきた。 さらに、本年度には、これら二つの細胞に対してマイクロアレイでの解析を行うとともに、RNAiを行うための予備的実験を行った。その結果、エナメル上皮腫細胞株AM1ではWnt-5a、Frizzled-2、MMP-2、-9、の高発現が認められ、特にMMP-9の発現が正常口腔粘膜上皮だけでなく、口腔がん細胞と比較しても、発現が亢進していることがわかった。さらに、AM3細胞では、Wnt-3aで刺激するとMMP-9の遺伝子発現が亢進し、それに加えてMMP-9の酵素活性の上昇も認められた。また、マイクロアレイの分析では、上述のWntに関連する遺伝子の発現の亢進が認められたほか、興味深いことにLPS受容体(リポ多糖受容体)の発現が亢進していることが認められた。また、エナメル上皮腫細胞にRNAiを行う際に、リポフェクタミンを用いた方法では適切な遺伝子導入が困難であったため、電気的遺伝子導入法をもちいて遺伝子導入可能かどうかを検証し、遺伝子導入に適切な条件を確立させ、RNAiの実験を可能な状況とした。 以上の結果から、エナメル上皮腫においてWntシグナル経路の活性化がMMP-9の発現及び酵素活性の上昇を誘導させ、骨浸潤を引き起こしている可能性が示唆された。また、マイクロアレイではLPS受容体の発現が亢進していることから、エナメル上皮腫病態の増悪に細菌感染が関連している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、新規に樹立させたエナメル上皮腫細胞株(AM3)と正常口腔粘膜上皮細胞株(MOE1)を用いて、エナメル上皮腫細胞のWntシグナル経路の活性化と骨浸潤に関する研究成果をまとめ、その成果は科学雑誌(Oral Surg Oral Med, Oral Pathol Oral Radiol & Endod)に掲載された。さらに、エナメル上皮腫と正常口腔粘膜上皮細胞株とを比較したマイクロアレイの結果を解析し、まとめた成果を科学雑誌に投稿するため準備中である。 これまでの結果から、Wntたんぱく質を含めた未同定の液性因子が、エナメル上皮腫が腫瘍細胞自身または周囲から産生されるか、エナメル上皮腫細胞内のWntシグナル異常などが原因となり、MMP等が産生されてコラーゲンの分解を介して、骨破壊や骨浸潤を促進し、破骨細胞や破歯細胞を分化誘導させることとなりうることが伺えた。さらには、マイクロアレイでLPS受容体の発現の亢進が認められたことから、エナメル上皮腫病変部が細菌感染を起こすと骨破壊や骨浸潤が亢進することが臨床的に観察されることは、細菌感染によるLPSの作用により、LPS受容体の高発現をしているエナメル上皮腫細胞になんらかの影響を及ぼしていることが示唆された。 以上のことから、エナメル上皮腫における骨浸潤の分子生物学的メカニズムについての解析は順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、エナメル上皮腫細胞株及び正常口腔粘膜上皮細胞株を用いて、コラーゲンマトリゲルチャンバーでの培養実験を行う予定であったが、実験条件の設定が困難であったため、方針を転換し、マイクロアレイを行いてWnt関連以外のシグナル分子や受容体などの遺伝子発現が亢進または抑制されているものがないかを網羅的に解析した。 今後は、マイクロアレイの解析データをまとめ、発現の亢進または抑制が認められた遺伝子に対して、RNAiを行い、エナメル上皮腫細胞における機能について解析する。また、遺伝子の解析だけでなく、エナメル上皮腫細胞が多量に分泌する液性因子の検索を行うために、培養上清を各種のカラムクロマトグラフィーを用いて分画して比較し、エナメル上皮腫に特異的な骨浸潤や歯根吸収に関わる可能性のある分子の精製、同定、作用の解析も行う予定である。そのうえで、エナメル上皮腫の骨浸潤を増悪させるリスク因子の確定へとつなげていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費で備品を購入する計画はない。研究費は主として細胞培養のための培地を含めた試薬、カラムクロマトグラフィー実験、マイクロアレイの解析などの消耗品の購入に費やされる。また、本研究成果を国内外の学会に発表し他研究者と情報交換するための交通費等として使用する。その他、論文の校正、掲載料に当てる予定である。
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