研究課題
新規MIA gene familyとしてMIA2、TANGO、OTORが存在することが明らかとなり、OTORは蝸牛にのみ発現が限局されるが、MIA2、MIA3ともに大腸癌、悪性黒色腫において癌抑制的に作用する。しかしながらMIA2、TANGO、OTORの3遺伝子ともMIAと50%近い相同性を有しており、oncogeneとしての側面も期待される。新規MIA gene familyについて口腔扁平上皮癌の臨床検体を用いた発現解析を行った。OTORは口腔扁平上皮癌には発現していなかったが、免疫組織化学的にMIA2とTANGOの発現を解析したところ、それぞれ口腔扁平上皮癌細胞の細胞質に発現が確認されたが、いずれも非癌部の口腔粘膜での発現は陰性か微弱であった。臨床病理学的因子との関連を統計学的に解析したところ、いずれも癌の進展ないしはリンパ節転移に関与しており、特にTANGOは口腔扁平上皮癌において血管新生・リンパ管新生数と有意な相関を認めた。凍結組織を用いたリアルタイムRT-PCRによるmRNA発現解析においても、非癌部の口腔粘膜と比較して口腔扁平上皮癌においてMIA2とTANGOの高い発現レベルが確認された。また口腔扁平上皮癌細胞株を用いた検討においてもMIA2とTANGOは腫瘍促進的に作用することが明らかとなった。現在、MIA gene familyのシグナル伝達経路を明らかにするためにマイクロアレイを行っており、次年度以降はアレイの結果に基づいたMIA gene family関連シグナルの発現・機能解析を行い、口腔扁平上皮癌の診断・治療標的としての可能性を模索する予定である。
2: おおむね順調に進展している
2011年度は臨床検体を用いたMIA gene familyの発現解析を主として行う予定であったが、順調に進捗することが出来た。またMIA gene family関連シグナルを明らかにするためのマイクロアレイについても満足いく結果が得られており、おおむね順調に研究が遂行されていると考えている。
マイクロアレイによりピックアップされたMIA gene family関連シグナルの詳細な発現・機能解析を行い、あわせてそれらの因子が口腔扁平上皮癌の診断・治療標的となり得るかも解析する予定である。さらに実験動物を用いた検討も予定している。
さらに臨床検体数を増やして、MIA gene familyの口腔扁平上皮癌における役割を明らかにすると同時に、細胞株を用いたin vitroでの検討も引き続き継続予定である。またマイクロアレイにより得られたデータをもとにMIA gene family関連シグナルの詳細な発現・機能解析を主として行うことを予定している。
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