研究課題
酸化還元感受性転写因子はラジカルの酸化的攻撃により活性化され炎症やアポトーシス、発癌に関与する。著者らは以前、自動酸化し難い構造の抗酸化性フェノール関連化合物がいわゆるフェノール作用を介して炎症性サイトカイン発現を抑制することを発見した。この結果はラジカル化し難いフェノール関連化合物が酸化還元感受性の多くの転写因子の転写を調節できることを示唆した。今年度の研究では、低細胞傷害性で自動酸化し難い抗酸化性フェノール関連化合物をさらに探査し、それらが生理活性物質発現を抑制できるか調査することであった。Eugenol、bis-eugenol、thymol、indol、melatonin、L-menthol, 1,8-cineol, honokiol、magnololを使用し、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞における細胞傷害性を CCK-8 kitを使用して検討したところ、これらの化合物は100M以下の濃度で細胞傷害性を示さなかった。一方、LPSや細菌線毛などの細菌構成成分刺激TNF-、COX-2の発現はいくつかのフェノール関連化合物によって顕著に抑制された。同様に、これらの化合物のいくつかは酸化還元感受性転写因子のうちNF-Bの調節作用を有することが判明した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成24年度の予定は伝統的な漢方薬や伝承医薬などに介在している多くのフェノール関連化合物の・細胞傷害性試験および生理活性物質の発現調節作用を検討することであった。現時点では研究実績に示すように概ね当初予定を達成していると考える。しかし、生理活性物質の発現調節作用が十分とは言えず、今後の課題になると考える。昨今は国民の健康志向の高まりの中で、自然食品や天然産物の医薬品への応用が報じられている。国民医療のさらなる向上に向けて、新しい抗酸化性植物フェノール関連化合物の酸化還元感受性転写因子の調節作用を探査することは興味がある。
平成24年度の研究達成度は概ね達成をしている。一方、伝統的な漢方薬や伝承医薬などの成分中のフェノール関連化合物だけでなく、既存のフェノール関連化合物にも新たなる活性の存在が示唆された。自動酸化しにくい構造のフェノール関連化合物はいわゆるフェノール作用によって抗酸化性と抗炎症性を発揮できることから、多くの天然フェノール関連化合物の医薬品への応用を検討することに興味がある。よって抗腫瘍性・抗炎症性をもつとされる植物性の抗酸化性フェノール化合物の細胞傷害性を引き続き検討し、さらに拡充した生理活性物質の発現の調節作用を検討する。そして表題にあるような酸化還元感受性転写因子の調節作用の検討を始める。より効果的なNSAIDs様作用をもつ抗酸化性フェノール関連化合物を発見しPDTにおける転写調節に応用することが必要と考える。
平成24年度に引き続き、多種の抗酸化性フェノール化合物の細胞傷害性と組織細胞における誘導型の炎症性サイトカインおよび生理活性物質の抗酸化性フェノール化合物による調節作用をReal-time PCR法とWestern blot法で検討する。さらに、ELISA様転写因子活性化測定kitを用いて、誘導刺激によって細胞核内に移動した酸化還元感受性転写因子のそのコンセンサス配列への結合性が抗酸化性フェノール関連化合物で調節されるか否かを検討する。また、その前段階となりうる情報伝達系への抗酸化性フェノール化合物の関与も改めて調査する。
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In Vivo
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ISRN Dent. 2012
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