研究概要 |
歯嚢には,骨芽細胞や神経芽細胞へと分化する未分化な細胞が存在することが報告されたことから,再生医療の細胞源として期待されている.本申請は,歯嚢由来細胞 (DFC) の臨床応用を視野に入れ,分子生物学的性質を検討することを目的としている.本年度では,DFCのランスクリプトーム解析を行った.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,埋伏抜歯の際採取した歯嚢を酵素処理し,DFCを分離した.骨髄由来未分化間葉系幹細胞 (MSC) はLONZA社から購入した.DFCおよびMSCを growth mediumまたはosteogenic induction medium (OIM)で培養し,total RNAを抽出した.遺伝子発現は Affymetrix Gene Chip HG U113 plus 2.0 を,miRNA発現はAgilent miRNA microarray 8x15K を用いて測定した.【結果および考察】骨芽細胞へ分化誘導を行っていないDFCおよびMSCについて, coding RNAおよびnon-coding RNAの発現を比較検討した.stem cell markerはDFCとMSCで発現が類似していた.一方,DFCではLHX8, FOXO1遺伝子発現が,MSCではHOXA遺伝子群の発現が高かった.また,miRNAでは,DFCでmiR-20A*, miR-129-3p, miR-1271が,MSCではmiR-196a,b, miR-10a,bの発現が高かった.HOX遺伝子やmiRNAは細胞特異的に発現していると示唆された.次に,DFCの石灰化過程で発現変動する遺伝子群を調べたところ,培養3日目ではBMP-2, BMP-6, TGF-βの遺伝子発現が高かった.骨芽細胞誘導初期では,BMPおよびTGF-β signalig pathwayが亢進していることが示唆された.
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