研究課題/領域番号 |
23592947
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小倉 直美 日本大学, 歯学部, 講師 (10152448)
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研究分担者 |
伊藤 耕 日本大学, 歯学部, 助教 (20419758)
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キーワード | 歯嚢由来細胞 / microRNA / 石灰化 / miRNA-mRNA |
研究概要 |
ヒト歯嚢組織には,未分化間葉系幹細胞が存在し,培養ヒト歯嚢由来細胞 (hDFC) は骨芽細胞誘導培地で培養すると石灰化することから,硬組織再生の細胞源として注目されている.本年度は,hDFCの石灰化に関与する遺伝子の検索を目的として,microRNA (miRNA) のマイクロアレイ解析を行い,石灰化に関与するmiRNAの検索を行った.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,埋伏抜歯の際採取した歯嚢を酵素処理し,hDFCを分離した.hDFCを growth medium (GM) またはosteogenic induction m edium (OIM)で培養し,total RNAを抽出した.miRNA発現はAgilent miRNA microarray 8x15K を用いて測定した.さらに,miRNA発現はQiagen miScrip Systemを用いてreal time-PCR法で確認した.hDFCへのmiRNA遺伝子導入はQiagen HiPerFectを用いた.【結果および考察】GMまたはIOMで培養したhDFC間でmiRNAの発現解析を行った.GMで培養したhDFCに比べ、OIMで培養したhDFCで発現上昇したのは33 miRNA, 発現減少したのは35 miRNAであった.発現減少した遺伝子群にmiR-29a, miR-29bが認められた.miR-29a, miR-29b, miR-29cの経時的遺伝子発現を調べたところ,培養12日目までGMに比べOIMで培養したhDFCではこれらmiRNAの発現は減少していた.次に,hDFCにmiRNA-29abcを遺伝し導入し,OIMで培養を行ったところ,石灰化の遅延が認められた.よって,hDFCの石灰化には,miRNA-29abの発現減少が関与している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十数名の患者から歯嚢を採取し,歯嚢由来細胞の分離・培養後,細胞保存しており,実験に使用可能な歯嚢由来細胞の例数は増えている.歯嚢由来細胞および 骨髄由来未分化間葉系幹細胞について,coding RNA および non-coding RNA のマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析は順調に進んでいる.さらに,歯嚢由来細胞の石灰化に関与するmicroRNAの検討も進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
歯嚢由来細胞の石灰化過程で発現減少したmiR-29abcの標的遺伝子を検索する.また,miR-29abc以外にも石灰化過程で発現変動するmiRNAを検索するとともに,発現変動したmiRNAをDFCに遺伝し導入し,石灰化への影響を調べる. 歯嚢由来細胞および骨髄由来未分化間葉系幹細胞について,石灰化過程で発現変動するcoding RNAとnon-coding RNA間での比較発現解析を行う.石灰化または骨芽細胞分化に関与すると示唆される遺伝子を検索する.また,候補に上がった遺伝子の経時的変化をreal time-PCR法で調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 細胞培養用培地および器具:歯嚢由来細胞および骨髄由来未分化間葉系幹細胞の培養 2. real time-PCR用試薬およびprimer作製:coding RNAおよびnon-coding RNAのマイクロアレイ解析結果をreal time-PCR法を用いて 検証する. 3. miRNA mimicおよび遺伝導入用試薬:石灰化過程で発現変動したmiRNAをDFC遺伝子導入し,石灰化への影響を調べる.また,導入したmiRNAの標的候補遺伝子を検索し,タンパク質産生のへの影響を調べる. 4. マイクロアレイおよびマイクロアレイ測定用試薬:患者から採取した細胞を実験に使用する場合,個体差が問題となる.そこで, 数名の患者から分離した歯嚢由来細胞について,coding RNAおよびnon-coding RNAのマイクロアレイ解析を行う.
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