研究課題/領域番号 |
23592954
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠原 文明 東北大学, 大学病院, 助教 (80400258)
|
研究分担者 |
宮下 仁 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70372323)
|
キーワード | 口腔癌 / 上皮成長因子 / 分子標的薬 |
研究概要 |
上皮成長因子の受容体であるEGFRは、頭頸部扁平上皮癌を含む多くの癌細胞に過剰に発現されており、癌の増殖、血管新生、転移に関連している。EGFR阻害剤の一つCetuximabはEGFRにアンタゴニストとして作用して大腸癌における有効性が認められているが、EGFR下流のシグナル分子の遺伝子変異がその薬剤効率に影響を与えることが知られている。また一方で腫瘍局所に浸潤したNK細胞からのIFN-rが、それ自身抗腫瘍活性を発揮することや細胞傷害性T細胞の活性化など抗腫瘍免疫において重要なサイトカインである。本研究は口腔癌由来細胞株を用い、口腔癌で多用される抗癌剤とEGFR阻害剤との併用増強効果、IFN-rの関連を検討しそのメカニズムを解明することを目的としている。平成24年度は以下の内容に取り組み成果をあげた。腫瘍免疫において重要な役割を持つIFN-rが、腫瘍細胞内の特定の酵素によって切断分解される機構が存在することから、IFN-r分解責任酵素同定と効果を検討した。すなわち口腔癌由来細胞株であるHSC-3細胞からのlysateから、タグを付加したrIFN-rとタグ結合レジンビーズを用いてIFN-rと結合するタンパクを回収した。これをSDS-PAGEにて展開後、質量分析法にてタンパクの同定を行なった。【結果】HSC-3細胞において、IFN-rと結合する複数のタンパク(peroxiredoxin、Hornerin他)が候補に上がった。【研究結果の意義】今回同定されたタンパクが、腫瘍のアポトーシスを誘導する活性酸素を分解、上皮細胞の再生分化あるいは細胞増殖に関連することから、これがIFN-rと結合し何らかの作用することにより、抗腫瘍効果を得ることが示唆された。このメカニズムの解析には腫瘍組織内における各分子の発現や増殖能を、培養系やモデルマウスによる更なる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、口腔癌細胞株(HSC-3)において、IFN-rと結合するタンパクを同定した。すなわち、癌細胞が抗腫瘍作用を示すIFN-rを分解する酵素を高発現し、腫瘍局所でのIFN-r濃度を低下させ抗腫瘍効果を減弱して、腫瘍免疫系からの回避を行なっている可能性があるがまだ、詳細は不明であり、細胞内のこのような非常に微量な分子を免疫沈降法と質量解析法で検出するのは再現性や精密性の観点からまだまだ再実験を含めた検討の余地が残っている。今年度は前年度の解析結果を踏まえ、in vivoによる効果の検討を重ねて新たな治療法の確立を目指した実験を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2、HSC-3、HSC-4)や舌癌由来細胞株(SAS)等を用い、IFN-r分解責任酵素同定を行う。各種培養細胞にIFN-rを加え、細胞のviabilityや増殖能、アポトーシスおよびオートファジーの関連タンパクの発現を解析する。また、同定された分子の遺伝子のノックダウンや過剰発現させ解析する。また5-FU,CDDPなどの抗癌剤と併用によるEGFR阻害剤(Cetuximab)の感受性の違いが、下流のAct経路を介していることから、その上流のKRAS、BRAF、PIK3CAの遺伝子変異(メチル化異常)の検討を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた口腔癌における抗癌剤とEGFR阻害剤との併用増強効果の遺伝子解析を、腫瘍細胞が免疫系からの回避におけるIFN-r分解の検討へ変更したことにより生じたものであり、次年度以降に実施する抗癌剤とEGFR阻害剤の感受性に関わる遺伝子変異の検討に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
|