研究課題/領域番号 |
23592961
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岸本 晃治 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40243480)
|
研究分担者 |
伊原木 聰一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (80549866)
|
キーワード | Angiogenin / Neamine / Neomycin / 口腔癌 / 血管新生 / 米国 |
研究概要 |
【目的】血管新生蛋白angiogenin (ANG)の核移行阻害剤であるアミノグリコシド系抗生物質neomycinの非毒性誘導体neamineの口腔癌に対する抗腫瘍効果を評価し,neamineの口腔癌分子標的治療薬としての有効性を検討した。 【方法】1)口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2に加え,HSC-3とSASにおいてANGの核移行をneamineが阻害するかを検討した。次に,これらの細胞の増殖をneamineが抑制するかをin vitroで検討した。2)HSC-2とSAS細胞をヌードマウスの皮下に移植し,neamineの皮下注射を行い抗腫瘍効果を検討した。そして,腫瘍組織を採取後,抗PCNA抗体および抗CD31抗体で染色し,腫瘍増殖能および血管新生能を評価した。さらに,リボソームの生合成をnucleolar organizer region (NOR)の銀染色で,アポトーシスをTUNEL染色で評価した。 【結果】1) Neamineは上記の細胞すべてにおいてANGの核移行を阻害した。また,neamineは,in vitroで,HSC-2とHSC-3細胞に対して増殖を完全に抑制したが,SAS細胞に対しては増殖を完全に抑制できなかった。2) Neamineは,in vivoで,HSC-2およびSASの腫瘍に対して同程度に腫瘍増殖抑制効果(約60%)を示した。Neamineを注射したHSC-2腫瘍組織で,ANGの核内での発現の減弱,PCNA indexの低下,腫瘍血管数の減少,NORのドット数の減少,アポトーシス細胞の増加が確認できた。 【考察および結論】Neamineは口腔癌分子標的治療薬の候補と考えられ,そのメカニズムは主に腫瘍血管新生抑制作用を介する腫瘍増殖抑制効果と考えられた。さらに,neamineは口腔癌細胞の種類によって直接的な腫瘍細胞増殖抑制効果を示す可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2に加え,HSC-3およびSAS細胞に対するneamineの抗腫瘍効果をin vitroとin vivoで検討し,細胞の違いについても評価することができた。そして,免疫組織化学的染色,リボソームの生合成,アポトーシスについての結果を得た。さらに,neamineの投与量・投与経路については,30mg/kgで週3回が妥当であるとの結果を得た。しかし,論文として発表するには,動物実験を再度施行し,免疫組織化学的染色の鮮明写真やばらつきの小さいデータを得る必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までで,「血管新生蛋白angiogenin (ANG)の核移行阻害剤であるアミノグリコシド系抗生物質neomycinの非毒性誘導体neamineの口腔癌に対する抗腫瘍効果を評価し,neamineの口腔癌分子標的治療薬としての有効性を検討する」という目的はほぼ達成された。したがって,今後は,これまでの研究成果をまとめた論文を作成する。しかし,免疫組織化学的染色の不鮮明写真やデータ的にばらつきの大きい結果については,再度やり直して,論文掲載のために確実な結果を得る必要がある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1. 研究が順調に進行し動物実験の回数が減ったため次年度への繰越金248,637円が生じた。しかし,結果の確認のための動物実験と免疫組織化学的染色のために次年度への繰越金は必要であり,この繰越金を含めた約450,000円を,これらの結果確認のための実験に計上する。 2. 国際口腔外科学会での成果発表を予定し,外国旅費約400,000円,学会参加費100,000円を計上する。 3. 外国語論文の校閲100,000円,投稿料と印刷費100,000円を計上する。 4. 写真の画像処理のためのコンピュータおよびソフトしとして300,000円を計上する。
|