研究課題/領域番号 |
23592963
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
重石 英生 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90397943)
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研究分担者 |
鎌田 伸之 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70242211)
東川 晃一郎 広島大学, 病院, 講師 (80363084)
小野 重弘 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70379882)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 |
研究概要 |
今回、口腔癌細胞株および唾液腺癌細胞株を用いて癌幹細胞の同定と機能解析を行った. FACS解析より、癌幹細胞にはEMTに関与する癌幹細胞(CD44high/ESAlow phenotype)と上皮性癌幹細胞(CD44high/ESAhigh phenotype)の二つのphenotypeが存在し、その自己複製には活性化型GSK3betaが関与することが明らかとなった.またCD44high/ESAhigh細胞はRHAMMが過剰発現しており,特に増殖能が高いことが明らかとなった.興味深いことに,GSK3betaのリン酸化にはCD44が関与しており,CD44が単なる癌幹細胞のマーカーではなく,CD44/RHAMM- ERK-GSK3betaのシグナル経路を制御することにより,癌幹細胞の自己複製と分化を調整することが明らかとなった.以上より,RHAMMは癌幹細胞において重要な機能を担う可能性が示唆された.さらに癌幹細胞の抗癌剤抵抗性についても検討した結果,活性化型GSK3beta を持つCD44high/ESAlow/low細胞は5-FUに対して最も高いアポトーシス抵抗性を示した.このEMT phenotypeからsingle cell cloneを培養し、性状を解析した結果、このクローンは自己複製能が非常に高いがMETを起こすことがなかった.またRHAMMの発現が高いCD44high/ESAhigh細胞は,epiregulin産生能が高いことより,以前の研究結果と照らし合わせると,epiregulinの自己産生により抗癌剤抵抗性の獲得に関与する可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究より,RHAMM及びCD44が口腔癌および唾液腺癌幹細胞の自己複製において、重要な役割を担っていることが明らかとなった.さらには,GSK3betaのリン酸化にはCD44とRHAMMが関与しており,RHAMMが単なる癌幹細胞のマーカーではなく,CD44/RHAMM-ERK-GSK3betaのシグナル経路を制御することにより,癌幹細胞の自己複製と分化を調整することが明らかとなった.さらには,癌幹細胞の抗癌剤抵抗性についても検討した結果,CD44high/ESAlow細胞は5-FUに対して最も高いアポトーシス抵抗性を示した.これらの結果から,唾液腺癌細胞におけるRHAMMの重要な機能や,抗癌剤抵抗性の獲得機構の概要が明らかとなり,研究は順調に進んでいると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
唾液腺癌細胞を用いて,RHAMMを過剰発現させた際の抗癌剤(5-FU,CDDP,Docetaxel)に対する抵抗性について検討する.さらに,転写因子として機能するNR4A2がRHAMMの転写促進に関与し, RHAMMがアポトーシス抵抗性に関与するか検討する.さらには,広島大学病院口腔顎顔面再建外科にて切除し,患者による同意が得られた唾液腺悪性腫瘍症例の新鮮凍結材料を用いて,RNAを抽出し,Real time RT-PCR法により,RHAMM mRNAの発現解析を行う.また唾液腺腫瘍症例のパラフィン包埋切片を用いて,免疫組織学的にRHAMMの発現検索を行う. また,腫瘍の増殖活性を明らかにする目的で,免疫組織学的にPCNAおよびKi-67の発現を検索し, RHAMMの発現との相関性についても検討する.唾液腺腫瘍症例の新鮮凍結材料を用いて,DNA抽出を行い RHAMM cDNA probeを作成しRHAMMの遺伝子増幅の有無を検索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては分子生物学、細胞生物学、生化学、免疫組織化学などの実験手技を用いて検索する.生化学的検討には、各種遺伝子産物の抗体、抗リン酸化蛋白抗体、蛋白質実験関連試薬、ウエスタンブロッティング用試薬、蛍光抗体などが必要である.また分子生物学的実験のためには、大腸菌培地、寒天培地、抗生剤、プラスミドベクター、大腸菌からのプラスミド回収キット、制限酵素、アガロースゲル、電気泳動試薬、PCRプライマーの合成、ピペット、チップ、各種プラスチックチューブ等の消耗品などが必要であり、以上の物品購入に研究費を使用する予定である.また、学会発表のための出張費にも研究費を使用する予定である.
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