研究課題/領域番号 |
23592963
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
重石 英生 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (90397943)
|
研究分担者 |
鎌田 伸之 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (70242211)
東川 晃一郎 広島大学, 大学病院, 講師 (80363084)
小野 重弘 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (70379882)
|
キーワード | 癌幹細胞 |
研究概要 |
今回、口腔癌細胞株および唾液腺癌細胞株を用いて癌幹細胞の同定と機能解析を行った. FACS解析より、癌幹細胞にはEMTに関与する癌幹細胞(CD44high/ESAlow phenotype)と上皮性癌幹細胞(CD44high/ESAhigh phenotype)の二つのphenotypeが存在し、その自己複製には活性化型GSK3betaが関与することが明らかとなった.またCD44high/ESAhigh細胞はRHAMMが過剰発現しており,CD44high/ESAlow phenotypeやCD44low phenotypeと比較して増殖能が高いことが明らかとなった. 興味深いことに,GSK3betaのリン酸化にはCD44やRHAMMが関与しており,CD44が単なる癌幹細胞のマーカーではなく,CD44/RHAMM-ERK-GSK3betaのシグナル経路を制御することにより,癌幹細胞の自己複製を調整する可能性が示唆された. さらに、CD44high/ESAlow phenotypeからsingle cell cloneを培養し、性状を解析した結果、このクローンは自己複製能が高く、抗癌剤抵抗性が高いことが明らかとなった. また、GSK3beta knock down後には、CD44high/ESAlow phenotypeはCD44high/ESAhigh phenotypeに変化することが明らかとなり、GSK3betaのknock downによりMETが誘導されることが示唆された. 以上より,GSK3beta及びRHAMMは口腔癌幹細胞において、自己複製と分化を調節するという重要な機能を担う可能性が示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究より,RHAMM及びGSK3betaが口腔癌および唾液腺癌幹細胞の自己複製と分化の調節において、重要な役割を担っていることが明らかとなった.さらには,GSK3betaのリン酸化にはCD44とRHAMMが関与しており,CD44/RHAMM-ERK-GSK3betaのシグナル経路を介することにより,GSK3betaが癌幹細胞の自己複製と分化を調整することが明らかとなった.さらには,抗癌剤抵抗性についても検討した結果,CD44high/ESAlow細胞はCD44high/ESAhigh 細胞やCD44low 細胞と比較して5-FUに対して最も高いアポトーシス抵抗性を示した.これらの結果から,口腔癌幹細胞の幹細胞性維持の概要が明らかとなり,研究は順調に進んでいると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
広島大学病院口腔顎顔面再建外科にて切除し,患者による同意が得られた口腔扁平上皮癌例および唾液腺悪性腫瘍症例の新鮮凍結材料を用いて,タンパク質を抽出し,western blot法により,リン酸化GSK3betaの発現解析を行う. また口腔扁平上皮癌例および唾液腺悪性腫瘍症例のパラフィン包埋切片を用いて,免疫組織学的にリン酸化GSK3betaの発現検索を行い、病理組織学的な腫瘍の浸潤度や患者の予後との関連を検討する. さらに、CD44high/ESAlow phenotypeの抗癌剤(5-FU,CDDP,Docetaxel)に対する抵抗性やABC transporter遺伝子の発現についても検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては分子生物学、細胞生物学、生化学、免疫組織化学などの実験手技を用いて検索する.生化学的検討には、各種遺伝子産物の抗体、抗リン酸化蛋白抗体、蛋白質実験関連試薬、ウエスタンブロッティング用試薬、蛍光抗体などが必要である.また分子生物学的実験のためには、大腸菌培地、寒天培地、抗生剤、プラスミドベクター、大腸菌からのプラスミド回収キット、制限酵素、アガロースゲル、電気泳動試薬、PCRプライマーの合成、ピペット、チップ、各種プラスチックチューブ等の消耗品などが必要であり、以上の物品購入に研究費を使用する予定である. また、学会発表のための出張費にも研究費を使用する予定である.
|