研究課題
我々は、ヒト口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞株SASとCa9-22を徐々に濃度を上昇させながら2年間持続的に5-FUに暴露させ、2種類の5-FU耐性株SAS/FR2と Ca9-22/FR2を樹立した。これらの2種類の細胞株に対して、親株と耐性株のマイクロRNA(miRNA)マイクロアレイ解析を行ったところ、耐性株は親株に比べてmiR-30aの有意な発現上昇を認めた。よって、miR-30aはOSCCの5-FU耐性に関与することが考えられた。さらに、SASとCa9-22に対して一過性にmiR-30aの強制発現を行い、5-FUへのdrug sensitivity assayを行った結果、両細胞株の5-FUへの耐性度が上昇した。次に、SASとCa9-22にmiR-30aを安定的に強制発現させると、miR-30aの安定強制発現株2株はそれらの親株に比べて細胞増殖能が低下していた。一方、親株と安定強制発現株を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った結果、両細胞株に共通して安定強制発現株では親株に比べ、遺伝子、タンパクの両レベルにおいてサイクリンE2の発現低下を認めた。さらに、miR-30aの安定強制発現株中のmiR-30a発現を抑制すると、サイクリンE2の発現が上昇した。この結果と関連して、miR-30a安定強制発現株と親株の両株を5-FUで刺激し、細胞周期解析を行った結果、miR-30a安定強制発現株は親株に比べてG1期に属する細胞の割合が増加していた。
2: おおむね順調に進展している
口腔扁平上皮癌(OSCC)の抗癌剤(5-FU)耐性に関わるマイクロRNAの候補(miR-30a)を特定し、そのマイクロRNA発現を制御することによって耐性度の変化の確認作業まで遂行できているからである。加えて、5-FU耐性に影響を及ぼすmiR-30aの標的分子の候補(サイクリンE2)も特定している点は、本研究が順調に進展していることを反映している。
miR-30aの結合領域を有するサイクリンE2のプロモーター領域を組み込んだプラスミドベクターを作製し、実際に5-FU耐性株ではmiR-30aの制御下にサイクリンE2の発現が抑制されていることを証明する。加えて、サイクリンE2の発現低下によって細胞周期のG1 arrestが亢進していることを、サイクリンE2以外の分子の発現状況についても確認する。
上記プラスミドベクター作製にかかる費用、およびその解析試薬に対して研究費を使用予定である。加えて、細胞周期関連タンパクの抗体や細胞周期解析に必要なFACS関連試薬、その他、各種確認実験のために研究費を使用予定である。これらの研究結果については、国内外の学会で発表し、他の多くの研究者とディスカッションを行い、研究の質の向上に努める予定である。また、平成25年度は研究結果をまとめる段階となるため、論文作成のための英文校正費用にも予算を使用する計画を立てている。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)
Cancer Sci.
巻: 103 ページ: 455-63
10.1111/j.1349-7006
J Radiat Res.
巻: 53 ページ: 492-6
Oral Science International
巻: 9 ページ: 33-7
10.1016/S1348-8643(12)00008-0
日本口腔顎顔面外傷学会誌
巻: 11 ページ: 15-20
日本口腔外科学会誌
巻: 58 ページ: 332-6