• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

口腔扁平上皮癌の低酸素環境におけるEMTの解明と治療標的としての意義

研究課題

研究課題/領域番号 23592968
研究機関鹿児島大学

研究代表者

石田 喬之  鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (20404501)

研究分担者 宮脇 昭彦  産業医科大学, 大学病院, 講師 (40200216)
比地岡 浩志  鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (70305150)
池田 龍二  鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (50398278)
中村 典史  鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60217875)
キーワード口腔癌 / Notch / EMT / 低酸素
研究概要

口腔扁平上皮癌の予後因子として最も需要なことは頸部リンパ節への転移の有無である。癌細胞が浸潤、転移する能力を獲得する過程で上皮間葉移行(EMT)という現象が注目されているが、口腔扁平上皮癌細胞ではそのメカニズムは明らかでない。また癌組織における微小環境が癌の性質に影響を与えているとの報告もある。癌組織は慢性的な低栄養、低酸素状態にあると言われている。低酸素状態に置かれた癌細胞は低酸素誘導因子(HIF-1α)を安定化させる。HIF-1αは様々な因子を活性化させ、癌の悪性化に関与していると報告されている。Notchは細胞の分化に関係している因子であり、幹細胞の恒常性の維持に低酸素環境とNotchが関与しているとする報告もある。乳癌細胞で低酸素環境がNotchを活性化することによりEMTを誘導するとの研究報告があるが口腔扁平上皮癌細胞ではそのメカニズムは明らかでない。
今回我々は口腔癌細胞株において低酸素環境がNotchを介してEMTを誘導するかどうかを調べた。免疫学的染色では上皮マーカーであるE-cadherinの発現の低下を認めた。またそれはotch阻害物質であるγ-secretase inhibitorを添加することにより阻害された。リアルタイムPCRにおいては低酸素環境ではNotchのmRNAの発現量が増加し、Notch標的遺伝子であるHES1、HEY1の発現の増加を認めた。またE-cadherinの抑制遺伝子であるsnailの発現増大を認めた。
またwound healing assayでは低酸素環境で口腔癌細胞の走化能の亢進を認め、invasion assayでは浸潤能の亢進を認めた。またこれらの作用はγ-secretase inhibitorを添加することにより阻害された。
以上から口腔癌細胞株において低酸素環境がNotch経路を介してEMTを誘導することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低酸素環境が口腔癌細胞株の走化能と浸潤能を亢進させたこと、それらがNotch阻害物質であるγ-secretase inhibitorの添加により阻害されたことから低酸素環境が口腔癌の悪性化に関与していること、それがNotch経路を介していることを明らかにした。またE-cahderinの発現が減少していることから低酸素環境がEMTを誘導することが示唆された。

今後の研究の推進方策

この研究には複数の口腔癌細胞株を使用し、そのすべての細胞株が低酸素環境で走化能、浸潤能が亢進したが、γ-secretase inhibitorによりすべて細胞株の走化能、浸潤能亢進が阻害されたわけではなかった。これはつまり低酸素環境が口腔癌の悪性化に関与していることが示唆されたが、すべての癌細胞でNotch経路が関与しているわけではなく、低酸素環境は別の経路も活性化させ癌細胞の悪性化を亢進している可能性も示唆している。そこで今後EMTを引き起こす別の経路についても低酸素環境での活性化の有無の検討を行うこととした。

次年度の研究費の使用計画

EMTを起こすその他の経路、twist、slugの経路について口腔癌細胞株を用いてreal time PCR、ウエスタンブロットにより定量的に計測し、低酸素環境における口腔癌細胞株のEMT誘導因子の解明を行いたいと考えている。

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi