研究課題/領域番号 |
23592974
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
坂下 英明 明海大学, 歯学部, 教授 (10178551)
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研究分担者 |
福田 正勝 明海大学, 歯学部, 講師 (10311614)
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔癌 / サイトカイン / IL-23 / NF-κB / アポトーシス |
研究概要 |
(1)明海大学病院にて治療を受けた10例の口腔扁平上皮癌患者の生検組織のホルマリン固定パラフィン包埋材料について,抗IL-23抗体および抗NF-κB抗体による免疫組織化学的検索を行い,その発現強度および局在を確認した.その結果,4例(40%)の主に炎症性細胞浸潤を起こしている部位にIL-23タンパク質の弱陽性反応を認めた.また8例(80%)の腫瘍細胞の核にNF-κB発現を認め,IL-23陽性サンプルにおいて特にNF-κB発現の強陽性所見が認められた.(2)5種類のヒト頭頸部扁平上皮癌培養株HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22およびKB(HPV感染株)細胞における,IL-23遺伝子ならびにタンパク質の発現状況をRT-PCR法およびWestern blot法にて確認したところ,各細胞株においてIL-23 mRNAおよびIL-23タンパク質の自発的な発現を確認した.さらに各細胞株を用いてReal time RT-PCR (qRT-PCR)法によりIL-23遺伝子の発現量の検索を行ったところ,Ca9-22細胞において最も多いIL-23 mRNA発現量を示したのに対し,HSC-3細胞において最も低い発現量を示した.このことから,HSC-3細胞(p53遺伝子変異株)を用いて,TNF-α(10 ng/ml)にて経時的に刺激した際のIL-23 mRNAの発現量をqRT-PCRにて検索したところ,時間依存的なIL-23 mRNAの発現増強を確認した.次に,各細胞株におけるIL-23タンパク質の培養上清中の分泌量をELISAにて測定したところ,無刺激下ではいずれの細胞株も極微量(1 pg/ml)であったが,HSC-3とKB細胞においてTNF-α刺激(10 ng/ml)により時間依存的なIL-23タンパク質の分泌を観察し,8時間で3 pg/mlであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ルシフェラーゼレポーターアッセイのパイロットスタディにおいて条件設定の段階(特に腫瘍細胞へのトランスフェト効率の問題)でなかなかうまくいかず,時間と労力を費やしてしまったが,ようやく安定したデータが出だしたので,次年度からは当初の計画以上の達成度が得られるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 引き続いて,多数の口腔扁平上皮癌の生検組織材料を用いて免疫組織化学的にIL-23とNF-κBの発現強度および局在を確認する.これらの結果と個々の症例の臨床病理学的諸因子との相関関係について解析を行う.(2) ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株HSC-2,HSC-3,HSC-4,Ca9-22(p53変異型)およびKB(p53野生型, HPV感染株)を用い,in vitroの系で研究を行う.すなわち,IL-23陽性腫瘍細胞株(HSC-3)に中和抗体である抗IL-23抗体(0.8μg/ml)およびIL-23 siRNAによるIL-23ノックダウンした際の細胞増殖阻害効果を検討すると共に,この細胞株を用いてNF-κBの活性動態をルシフェラーゼレポーターアッセイにて解析する.NF-κBの活性化が証明された培養株にNF-κBの活性阻害剤として知られるシメチジン,アスピリンあるいは抗IL-23抗体をそれぞれ濃度と時間を変えて作用させたときのNF-κBの活性動態を同様にして解析する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,ルシフェラーゼレポーターアッセイに重点を置いて研究を進めるため,研究費はこのアッセイ系に費やされる金額が多いと考える.しかし,ルシフェラーゼレポーターアッセイと細胞培養関連実験にて80万円ほどの使用計画を立てているため,資金としては十分に足りると考えている.
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