研究概要 |
1. ヒト口腔扁平上皮癌培養株HSC-2, HSC-3, HSC-4,Ca9-22およびSASにおけるIL-23 mRNAの発現状況を定量性RT-PCR法により確認したところ,p53野生株のSAS細胞に比べ,p53変異株であるHSC-2, HSC-3, HSC-4およびCa9-22に発現亢進が認められた.p53がIL-23 mRNAの発現量を調節している可能性が示唆されたことから,SAS細胞にp53 siRNAを導入してp53発現抑制した際のIL-23の発現について定量性RT-PCR法にて検索した.その結果,p53 mRNA発現量は明らかに減少したのに対し,IL-23 mRNA発現量は増大傾向を示した.腫瘍細胞自身がTNF-αを産生してNF-κBの活性化を誘導することで,その増殖・進展に重要な役割を担っていることから,p53 knockdownしたSAS細胞のTNF-α刺激を試みた.その結果,コントロールに比べて経時的なIL-23タンパク質の発現量の増大を確認した. 2. 55例の口腔扁平上皮癌患者の生検組織材料を用い,IL-23,p53およびNF-κBに対する免疫組織化学的検索を行い,その発現強度および局在を確認した.まず,p53発現を検索したところ,55例中22例の発現陽性症例(40 %)を認めたため,このサンプルを用いてIL-23の発現検索を行った.その結果,10例(45.5 %)の腫瘍細胞膜にIL-23の弱陽性反応を認めた.また16例(73%)の腫瘍細胞の核にNF-κB発現を認め,IL-23陽性サンプルにおいて特にNF-κBの強陽性所見が認められた.特にp53タンパク質の強陽性所見を示す症例においてIL-23陽性所見が多く認められた.以上のことから,p53変異を伴う口腔癌において,IL-23が発現亢進することで腫瘍の増殖・進展に重要な役割を担っていることが示唆された.
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