研究概要 |
近年、口腔粘膜表在性癌は増加傾向にあり、予後として多発・局所再発とともにリンパ節転移症例も含まれる。本研究では、舌表在性癌における局所再発・リンパ節転移の予後判定と予防につながる臨床病理診断基準の策定を目指して、外科切除症例における辺縁断端での異型上皮の表現型と深部断端での癌浸潤様式について免疫病理組織学的に検討した。本年度では、術前に超音波検査およびヨード生体染色が施された舌癌の外科摘出・パラフィン包埋試料から最大組織割面領域に相当する薄切を作成し、症例別に異型上皮の表現型を特異抗体(サイトケラチン CK4, CK5, CK7, CK8, CK13, CK17, CK18, CK19, E-カドヘリン, βカテニン)および腫瘍間質マーカ(CD31, CD34, CD105, D2-40, S100A4, αSMA, CD45, CD68)を用いた多重免疫染色により2次元免疫表現型マッピングと腫瘍実質・間質の立体構築を行った。周囲の健常粘膜上皮を対照として異型上皮、上皮内癌、微小浸潤癌、浸潤進行癌の特徴となる細胞表現型を明らかにした上で、舌癌割断面の薄切標本上で病変範囲をマッピングすることができた。これらの組織情報に基づいて、バーチャルスライドと多重免疫標識を併用した組織立体構築を遂行した。高分解能の3次元構築像では、細胞単位での核質・細胞質・細胞膜での分子局在を分別した上で、水平方向(上皮層内でのCK13/CK17の発現転換など)と深部方向(上皮・間質の接合面の形状や上皮層への脈管間質の侵入など)での病変境界の特徴を可視化できるとともに、上皮内での異型細胞と増殖活性の局在、微小浸潤にともなう孤在性癌細胞の出現頻度や腫瘍母集団の境界面からの最近接距離についての解析が可能であった。
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