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2012 年度 実施状況報告書

新しい視点からの局所麻酔薬の薬理作用と有害作用の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23592977
研究機関北海道大学

研究代表者

福島 和昭  北海道大学, -, 名誉教授 (00002361)

研究分担者 鈴木 邦明  北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40133748)
平沖 敏文  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10125346)
藤澤 俊明  北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30190028)
渋谷 真希子  北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30399951)
木村 幸文  北海道大学, 大学病院, 助教 (00292037)
キーワード局所麻酔薬 / Na,K-ATPase / Ca-ATPase / アルカリ性ホスファターゼ / リン脂質 / リポソーム / 骨芽細胞
研究概要

神経細胞膜の興奮性の維持をになうNa,K-ATPaseに対する局所麻酔薬の作用について検討を行った。5種類の局所麻酔薬は濃度に依存してNa,K-ATPase活性を抑制した。活性阻害の濃度は各局所麻酔薬の臨床使用濃度に近く、活性の50%阻害濃度と局所麻酔薬の力価あるいは毒性の間には相関が見られた。活性抑制の原因としてNa及びKイオンに対する親和性の低下が考えられた。生体膜の構成脂質であるホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンは、Na,K-ATPaseに対するプロカインの作用を低下させたが、リドカインなど他の局所麻酔薬による阻害を増強した。生体膜リン脂質が局所麻酔作用に影響することを示唆する。
歯科臨床において局所麻酔薬は歯槽骨周辺に浸潤麻酔として使用されることから、骨芽細胞由来の酵素に対する局所麻酔薬の作用を検討した。5種類の局所麻酔薬は濃度に依存してCa-及びMg-ATPase活性を抑制した。各麻酔薬の両ATPase活性阻害の順序は臨床的に推定されている各麻酔薬の作用あるいは毒性の強さの順序にほぼ一致していた。細胞の形質膜に対する局所麻酔薬の作用の結果としてこれらの酵素が抑制される可能性がある。リドカイン、プロカイン及びプリロカインはアルカリ性ホスファターゼ活性を抑制したが、ジブカインとテトラカインは抑制しなかったことから、局所麻酔薬に共通した作用ではなかった。
電子スピン共鳴(ESR)、19Fの核磁気共鳴(NMR)を用いた実験から、全身麻酔薬のイソフルレンはリポソーム膜の表層に結合し化学交換を行っていること、その膜に対する影響は膜の表層に強く作用し、深部ではその作用が低下することを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年までに予定していた研究のうち、1.脳細胞及び骨芽細胞の細胞膜とその周囲に存在するCa-, Mg-及びNa,K-ATPase及びアルカリ性ホスファターゼに対する各種局所麻酔薬の作用とその作用機序に関する検討を終えたこと、2.それらの酵素活性に対する細胞膜構成脂質であるホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンの影響を検討したこと、3.スピンラベルしたリポソームを作成して、電子スピン共鳴及び核磁気共鳴スペクトルを測定することにより、局所麻酔薬のリポソーム膜への結合様式を推測する系を確立したこと、4.細胞膜に存在するタンパク質を分離してリポソーム膜に組み込み、局所麻酔薬のリポソームの脂質部分に対する作用に及ぼすタンパク質の影響を検討する系を確立したことなどから、研究計画はおおむね順調に進んでいる。
精製したNa,K-ATPaseを蛍光性のSH試薬でラベルして蛍光強度変化からNa,K-ATPase反応中の分子構造変化を検出する研究が現時点で遅れているが、他の研究において実施した経験があるので、問題なく実施できると考えている。

今後の研究の推進方策

平成25年度は計画の予定通り、
1.細胞膜内タンパク質に対する局所麻酔薬の作用:各種局所麻酔薬存在下で蛍光測定の実験を行い、膜タンパク質のモデルとして用いたNa,K-ATPaseの分子構造変化に対する局所麻酔薬の作用を解析する。膜タンパク質の構造に対する、局所麻酔薬の作用を推定することができる。
2.局所麻酔薬のリポソーム内への移行性の確認:リポソームをモデルにESRスペクトルの測定により、各種麻酔薬の細胞内移行性を評価する。モデルリポソームは二重層膜なので、局所麻酔薬の作用が膜の外部側にとどまるか、内部にまで浸透しているかを判定することができる。
3.有害作用の少ない局所麻酔薬の所要性質のデザイン:1)ナトリウムチャネルに対する作用、2)Na,K-ATPase活性に対する作用、3)生体膜モデル(リポソーム)の物性に対する作用、4)培養神経細胞と筋肉細胞に対する作用、5)臨床的に報告されている有害作用と、各局所麻酔薬の構造活性相関を解析し、局所麻酔効果と有害作用を分離するための構造をデザインする。
さらに、得られた結果を取りまとめ、局所麻酔薬の薬理作用と有害作用の関連についても、成果の発表を行う。

次年度の研究費の使用計画

①平成24年度未使用額の発生理由
2月末日の時点では、発注していた物品の納入の遅れなどから、866,395円の未使用額が存在したが、3月中に、購入を予定していた物品が納入されたことから、3月末時点では残額はほとんどない。
②平成24年度未使用額の平成25年度使用予定
残額はわずかであるため、研究計画時の平成25年度使用予定に対する影響はない。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ラット脳カルシウムATPase活性の静脈麻酔薬による抑制2012

    • 著者名/発表者名
      田仲宏光,出山義昭,吉村善隆,鈴木邦明,福島和昭
    • 雑誌名

      北海道歯誌

      巻: 32 ページ: 222-229

    • 査読あり
  • [学会発表] フッ素とベリリウムによるNa,K-ATPase 活性阻害の相違

    • 著者名/発表者名
      沖野雄一郎、出山 義昭、 吉村 善隆、鈴木 邦明
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場・マリンメッセ福岡(福岡市)

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公開日: 2014-07-24  

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