研究課題/領域番号 |
23592982
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
芳澤 享子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (60303137)
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研究分担者 |
泉 健次 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80242436)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 口腔顎顔面再建外科学 / 口腔粘膜 |
研究概要 |
私たちはティッシュエンジニアリングの手法を用いた培養口腔粘膜(EVPOME)の開発とその臨床応用を行い、同時にその粘膜再生能について動物実験モデルより基礎的にも検討を重ねた結果、EVPOMEは口腔粘膜を良好に再生させることが明らかとなった。しかしながら、現在の培養方法では、得られる上皮細胞は増殖能、分化能が不均一な細胞集団であるため、患者によっては細胞増殖が遅く、そのような細胞は成長因子の放出量が少なく、培地内グルコース消費量が少ない、いわゆる細胞増殖能の不良なEVPOMEが作製される恐れがある。本研究の目的は、増殖能の高い均一な細胞集団である口腔粘膜上皮前駆/幹細胞を選別し、それらから作製したEVPOMEの粘膜再生能および再生機構を評価することであるため、平成23年度ではまずヒト口腔粘膜より口腔粘膜上皮細胞を培養し、それらから口腔粘膜上皮前駆/幹細胞集団と考えられる小型細胞集団を選別して、両群の細胞集団について、細胞増殖能を比較した。そしてGFPラットの口蓋粘膜を採取し、口腔粘膜上皮細胞集団より小型細胞集団を選別し、両群の細胞集団について細胞増殖能を比較した。さらにヒト口腔粘膜上皮細胞と口腔粘膜上皮前駆/幹細胞集団と考えられる小型細胞集団よりEVPOMEを作製し、ヌードマウス背部皮下に移植し、継時的に移植片を摘出しに観察したところ、移植後14日目、21日目でEVPOMEの上皮細胞側に新生した血管が肉眼的に観察されたことから、本移植モデルを用いることにより培養細胞の増殖活性の評価が可能であることが示唆された。そこで今後はGFPラット細胞を用いて、培養口腔上皮細胞と口腔粘膜上皮前駆/幹細胞集団よりEVPOMEを作製し、その増殖活性を比較するとともにラットの背部皮下に移植し、肉眼的、組織学的に検索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度においてはGFPラット口蓋粘膜細胞の培養と口腔粘膜上皮前駆/幹細胞の選別を行う予定であったが、培養細胞増殖能の検討のためこれまで行ってきたデータとの比較が必要となり、ラット細胞に先だちヒト口腔粘膜上皮細胞で、ナイロンメッシュ法を用いて培養上皮細胞集団より口腔粘膜上皮前駆/幹細胞と考えられる小型細胞集団を選別し、その増殖能の比較を行った。さらにそれらの細胞集団を用いてEVPOMEの作製し、それをマウスの背部皮下へ移植した。また、それと同時にGFPラット細胞で作製したEVPOMEの培養上皮細胞をEVPOMEの背部皮下移植後に同定する必要もあったため、平成23年度はGFPラットが有するGFP抗体を同定するため、その免疫組織化学的手法の確立も行った。以上のように、GFPラット口腔粘膜上皮細胞と口腔粘膜上皮前駆/幹細胞を用いたEVPOME作製の前に、予備実験が必要であったことから、平成23年度は主にヒト細胞を用いた結果が主となり、やや遅れているとの評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、平成23年度において選別したGFPラット口腔粘膜上皮細胞と小型細胞集団で作製したEVPOMEをラット背部皮下に移植する予定であったが、EVPOME作製とその免疫組織化学的検索、培養上清中の成長因子量との比較、検討が終わっていないので、作製したEVPOMEを用いてKi-67、Integrin-α6、PPARγ、Keratin13およびGFPによる免疫染色を行うと同時にEVPOME作製中の培養上清よりVEGF量、グルコース消費量を測定し、ヒト細胞での結果と比較検討する。そしてラットの背部皮下に移植して、移植後5、7、9、14、21、28日に屠殺し、EVPOME移植部を周囲組織とともに切除、摘出する。摘出物を肉眼的に観察するとともに、10%ホルマリン固定、パラフィン連続切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色を施し、組織学的に観察する。さらに、Ki-67、Integrin-α6、PPARγ、Keratin13、および血管マーカーであるCD34に対する抗体を用いて、免疫組織化学的に検索する。平成24年度に予定していたラット背部皮下移植部の組織学的検索およびさらに、Ki-67、Integrin-α6、PPARγ、Keratin13、血管マーカーであるCD34および4型コラーゲンの免疫組織学的検索は平成25年度に行う。さらに口腔内移植モデルも同時に作製し、EVPOME移植部を同様の組織学的、免疫組織学的検索を行い、2種類の細胞集団で作製されたEVPOME移植後の治癒過程の違いを2つの移植モデルより比較、検討し、成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では平成23年度において選別した口腔粘膜上皮細胞と小型細胞集団で作製したEVPOMEをラット背部皮下に移植する予定であったが、まだGFPラット細胞でのEVPOME作製と免疫組織化学的検索、培養上清中の成長因子量との比較、検討が終わっていないので、作製したEVPOMEを用いてKi-67、Integrin-α6、PPARγ、Keratin13およびGFPによる免疫染色を行うと同時にEVPOME作製中の培養上清よりVEGF量、グルコース消費量を測定する。ここで次年度使用分の385,966円を使用する予定である。その後にラット両群の細胞集団を用いてEVPOMEを作製し、背部皮下に移植して、移植後5、7、9、14、21、28日に屠殺し、EVPOME移植部を周囲組織とともに切除、摘出する。摘出物を10%ホルマリン固定、パラフィン連続切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色を施し、組織学的に観察する。さらに、Ki-67、Integrin-α6、PPARγ、Keratin13、および血管マーカーであるCD34に対する抗体を用いて、免疫組織化学的に検索する。
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