研究課題/領域番号 |
23592983
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
新美 奏恵 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20397136)
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研究分担者 |
芳澤 享子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (60303137)
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キーワード | 多血小板血漿 / 歯の移植 |
研究概要 |
歯の移植は、移植歯の歯周組織が良好に治癒し再生すれば、正常歯と同様の機能を果たすことが可能であるという点で人工材料による 治療よりも優れており、また、埋伏智歯など機能していない歯を移植歯として用いるために、自分自身の組織や器官を有効活用できる という利点もある。 一方で、多血小板血漿(PRP)は血小板中に含まれる各種成長因子や血液凝固の際に形成されるフィブリン網の介在によって創傷治癒 を促進すると考えられているが、どのような作用機序で組織再生に寄与しているか不明な点も多い。今回我々はラットの抜歯窩にPRP を応用し形態学的に観察した。 ラットの上顎臼歯3本を抜歯し、直径1㎜のラウンドバーで抜歯窩が連続するように骨欠損部を作製した。ラットの心臓より採血し作 製したPRPを骨欠損部に填塞する群(PRP群)と何も填塞しない群(コントロール群)を作製し、組織学的、免疫組織化学的検索を行っ た。 術後3日目のPRP群ではPRP下層に炎症性細胞の集塊とフィブリン網の形成、さらにその下方には多数の血管を含む肉芽組織が認められ たのに対し、コントロール群では骨欠損底部に炎症性細胞とフィブリン網がわずかに観察されるのみであった。また術後5日目のPRP群では骨欠損底部全体にわたり厚い肉芽組織の形成と周囲歯槽骨の吸収が認められたのに対し、コントロール群では骨欠損底部のところどころわ ずかに肉芽組織の形成と周囲歯槽骨の吸収を認めるのみであった。また、術後7日目には両群で抜歯窩の上皮化が見られたが、PRP群では上皮下に厚い肉芽組織がみられたのに対し、コントロール群では抜歯窩の陥凹が見られた。このことから、PRP群では豊富な新生血管を伴った肉芽組織の速やかな増生による治癒機転が働いていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画のうち、組織学的、免疫組織学的検索を行ったことにより、PRPに含まれる成長因子が口腔粘膜上皮細胞の増殖の活性化に関係しているかを調べることができた。すなわち、PRPを応用した場合は、使用しない場合と比較し、歯周組織の治癒の際には抜歯窩内に早期に炎症細胞の浸潤と、フィブリン網の形成が見られた。 この結果については2013年国際口腔外科学会で発表した。 その一方で、上皮の治癒の違いについては基底膜の再生の相違についてはいまだに不明なため、今後さらに検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)上皮再生の過程について経時的に免疫組織学的に観察する。 (2)in vitroでも、ヒト歯肉上皮細胞に対する細胞増殖能の経時的変化も観察し、PRPに含まれる成長因子が歯肉上皮細胞の増殖能の活性化に関与しているのかを明らかにする。96wellプレートに3000個/wellのヒト歯肉細胞を播種し、(a)コントロール(成長因子不含)(b)活性化したPRP上清を加えた群(c)成長因子を加えた群、(成長因子;rhKGF、rhPDGF、rhTGFβ、rhEGF)MTTアッセイにより細胞の増殖能を計測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度から25年度にかけてラットを用いてPRPを併用した歯の再植の動物実験モデルを作成し、観察期間が短い(1-7日間)実験を行った。その結果を分析したところ、14日以上の観察期間が必要となることが示唆された。しかし動物実験施設の改修により、実験を計画した時期に動物の受け入れおよび実験が行えなかった。 新たに動物を購入し、動物実験施設で受け入れて、14日以上の観察期間を設けて事件を行う。そのための動物の購入費、飼育費及び消耗品の購入に「使用する。これまでの実験結果と今回の実験結果を合わせて平成26年度口腔外科学会で成果を発表するための旅費に使用する。
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