研究課題/領域番号 |
23592990
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高木 慎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40116471)
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研究分担者 |
長塚 仁 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237535)
水川 展吉 岡山大学, 大学病院, 講師 (00263608)
辻極 秀次 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70335628)
岸本 悦央 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20091316)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インプラント / 象牙質 / セメント質 / 幹細胞 / 再生医療 |
研究概要 |
本研究は、チタンインプラント周囲に樹立した象牙質シート形成性培養細胞を用いてチタンインプラント周囲に象牙質を誘導し、新規生体機能付加インプラントシステムの開発を行うことを目的としている。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムとして利用する際、適正な性格を有するか否かについてin vitro条件下において検討した。細胞の性状に関する検討では石灰化培地による細胞分化課程の詳細について観察した。またマイクロアレイ法RT-PCR法を用いて象牙芽幹細胞株の遺伝子発現等について検討を行った。 象牙芽幹細胞株は細胞がコンフルエントに達した状態で、石灰化誘導培地を用いて培養すると2層の細胞層からなる象牙質シートを形成するが、細胞密度等、誘導条件を変化させると象牙質シート形成を制御できることが明らかとなった。細胞密度の低い状態で石灰化誘導すると象牙質シートを形成せず、細胞が単層のまま直接シャーレ底面に強固に付着していた。細胞の石灰化ノジュール形成は同程度であり細胞分化には影響がないと考えられる。チタンインプラント表面に象牙質を形成する場合、強固に細胞が結合した状態で移植、または象牙質シートを使用するなど状況に応じて細胞分化誘導を調節、生体機能付加インプラントに応用できる可能性が示唆された。 マイクロアレイ解析では、象牙芽幹細胞株が石灰誘導培地による誘導条件下において、歯および骨組織に関連する特異的な多数の遺伝子に発現量増加が認められた。 以上のことから樹立した細胞は象牙芽細胞の性格を有しており本研究目的に適した細胞であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムに利用する場合、適正な性格を有するか否かについて検討した。その結果本細胞は象牙芽細胞の性格を有しており、また培養細胞の細胞接着性が調節可能であることなどが判明し、研究進行状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度象牙芽幹細胞株の研究データを元として、引き続き同培養細胞株を用いてチタンインプラントと象牙質との結合実験を進める。またヒト歯髄細胞を用いてチタンインプラント結合性の細胞培養法開発を行う為、ヒト抜去歯の歯髄組織から培養細胞樹立を試みる。同時にヒト抜去歯歯根組織から歯根膜線維芽細胞の樹立を行う。樹立した歯髄細胞に関しては細胞の性格、分化能の検定、効率的な細胞分化誘導法について検討する。チタンインプラント体とヒト歯髄組織から樹立した細胞が結合性を有するかについて、培養細胞、実験動物を用いた実験系で確認を行う。・ヒト抜去歯からの初代培養:抜去歯を抗生物質含有培養液にて洗浄、歯髄組織および歯根膜組織を摘出する。その後コラゲナーゼ・ディスパーゼ含有培地にて反応後、細胞を回収する。回収した細胞は37度5%二酸化炭素下で培養を行い、培養条件の検討を行う。・ヒト歯髄および歯根膜線維芽細胞の細胞分化制御、結合性実験:チタンインプラント体と象牙質が強固に結合する条件を検討する為、各種コーティングチタンプレート上での細胞親和性等について評価する。各種表面処理を施したチタンプレート上で象牙芽培養細胞を培養し、細胞分化能、増殖能および石灰化に及ぼす影響について検討する。培養細胞とチタンプレートをマウス背部皮下に埋入し、象牙質とチタンプレートとの接着性を組織学的に判定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の設備・備品の申請はない。消耗品に関しては実験動物、培養用試薬、遺伝子発現解析、免疫組織化学関連試薬等、各種抗体を購入するために経費が必要である。特に当該年度は引き続き細胞培養関連の試薬購入が主に必要となる。旅費に関しては口腔外科学会総会(岡山-横浜)歯科基礎医学会総会(岡山-東京)にて研究成果発表予定のため申請した。謝金・その他に関しては英文論文2編の発表予定である。この為の論文投稿料(論文掲載費)を申請した。 繰越し金が生じた理由は以下の通りである。 象牙芽細胞様細胞の硬組織形成細胞への分化誘導が制御可能であることが明らかになり、研究対象が細胞の分化誘導条件検討に重点をおくことになった。そのため当初計画していた象牙芽細胞様細胞のチタンインプラント体との結合性に関する研究計画が延期され、当初計画していたインプラント体との結合性に関する研究経費が次年度へ繰り越されることとなった。
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