研究課題/領域番号 |
23592991
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松村 達志 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70432648)
|
研究分担者 |
田畑 純 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20243248)
平田 あずみ 大阪医科大学, 医学部, 助教 (40263587)
山近 英樹 岡山大学, 大学病院, 講師 (10294422)
森谷 徳文 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60467751)
|
キーワード | 歯根形成 / 再生医学 |
研究概要 |
歯の発生研究は歯冠形成期の上皮・間葉相互作用を中心に進められてきた。申請者らも細胞培養や歯胚の器官培養を用いて、分化誘導シグナルの肝細胞増殖因子(HGF)や骨形成タンパク(BMP)4などの関与を明らかにしてきた。これらの因子を詳細に解析するため、上皮と間葉の細胞を個々に調整し、個々に制御できる新しい共培養法=TDL培養を開発するに至った。これによりエナメル芽細胞の典型的な形態と歯胚組織の再構築が可能となった。一方、歯根形成期は、歯根再生と既存の歯科治療とを組み合わせる事で機能回復可能な事から、以前から注目されている。申請者らもin vivoによる報告してきたが、歯根形成期in vitro実験系は未だに十分に整備されておらず、そこから得られる知見も限られていた。そこで、前述の TDL培養法を歯根形成期のin vitro実験系に応用して、新たな手法の導入とメカニズム解明に切り込むことを着想した。 初年度では歯胚を用いた免疫組織学的手法により分化マーカーについてはパールカンが歯髄細胞のマーカーとなりうる事が明らかとなった。TLD培養で必要な歯胚間葉細胞の採取は確立しているため、本年度は切歯から歯根上皮・マラッセの上皮遺残の取り出しを試みた。通常の外科的処置による採取を行ったところ、切歯を取り巻く顎骨の除去は容易で、顎骨側に歯根上皮の残存はほぼ認めなかった。しかし、切歯から歯根上皮の剥離を試みたところ、非常に困難であった。そこで酵素処置を加えて歯根上皮の取り出しを試みた。コラゲナーゼによる酵素処理を行い、取り出した歯根上皮をシート上で培養した。その結果、歯根膜中の歯根上皮の割合はかなり少なく、多量のシャーピー繊維、繊維芽細胞、血管網等を認めた。それら組織はTLD培養には不要な組織であるため、いかにして除去していくかが今後の課題となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前記の如く、TDL培養で必要とする歯根上皮の採取に手間取っている。必要量を採取するには切歯から採取する事が第一と考え、現在の所、酵素処理を加えて検討している。今後の結果に応じて、日齢の変更や臼歯からの採取といったソースの変更も視野に入れる必要があると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き歯根上皮採取法の改善に努める。その際、培養下における細胞の動態、増殖、分化の基礎的データを免疫組織学的手法やタイムラプス撮影装置を用いて得る。さらに生後7-10日齢ラットから得た歯胚間葉細胞をコラーゲンゲル中に分散させての3次元培養に歯根上皮を分散、重層するTDL培養法を随時導入する。増殖、分化の検討と動態観察を常に行い、歯根上皮培養時との差異を検討する。特に歯根上皮の断裂・伸長の観られるものを検索し、細胞増殖や細胞分化(立方化や極性など)が見られるかを組織学的に解析してメカニズムを検証する。なお、研究者の相互関係は前年度と同じである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)で発生した金額は歯根上皮採取の遅れに起因するものである。そのため、推進方策で記載した通り、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究計画を進めていく予定である。 最終年度として歯根上皮を用いたTDL培養の確立を目指す。安定したTDL培養を確立させ、ヘパラナーゼ、SHH、FGFといった歯根形成・伸長に関係すると予想される因子をビーズ法等により発言調節してその役割を検証する。効果のある因子を特定できた場合、関連する形態形成遺伝子の発現をRT-PCRやホールマウントin situ ハイブリダイゼーション等による検証を行い成果の発表を行う。なお、研究者の相互関係は前年度と同じである。
|